アーユルヴェーダの健康的な秋の過ごし方

日に日に秋めいてきましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

昔の人の観察眼はさすがだなと思いますが立秋で朝晩が少し涼しくなり始め、処暑ではっきり涼しくなり夜には鈴虫?こおろぎ?が鳴き始めたりして、日の出が遅く日の入りが早くなってきましたね。

基本、日本の秋は「柿が赤くなると医者が青くなる」の諺の通り、

(かご猫ブログの故・シロちゃん↑)

病院が空きますし、普通の人は病気になることが少ない季節です。花粉症の人と喘息持ちの人を除いて。

それなら気をつける必要なんてないんじゃ?と思われるかもしれませんが日本の秋は夏と比べ空気が「冷たく」「乾燥」してくることから分かるように、ワータドーシャが自然に増えています。なので自然に囲まれている人間の体内でもワータが悪化しやすいです。ワータの悪化による症状は様々で、不眠、集中力低下、便秘、月経不順、あらゆる痛み。で最終的には脳卒中や心筋梗塞や神経難病ですかね。誰もかかりたくないと思いますが。日々の思考言動行動の積み重ねがあなたの健康を維持してくれるので、ひとまずは夏よりは万人に影響があって体に悪い季節ではありませんが、理想的な秋の過ごし方。についてみてみましょう。

インドの秋は非常に暑く、ピッタを悪化させます(日本の真夏くらいです)。しかしアメリカ合衆国や日本の大半のような、ほとんどの温帯地方では秋は乾燥、軽い、冷たい、荒れた、風の強い時期でこれらの性質はどれもワータドーシャを悪化させるものです。よって自然に、温帯における秋の過ごし方とはワータの鎮静に重きを置いたものとなります(アーユルヴェーダの古典至上主義者は日本の秋でも「秋だから」ピッタが悪化する、と言っている人がいます。冷静に観察すれば台風がたくさん来て喘息患者は入院したりする季節な訳で、喘息ってワータとカファが関与する病気ですし空気が「冷んやり」として「乾燥」もしてくるので、ワータが増えてるな、ってのは分かりそうなものですが。季節が6つある熱帯のインドと4つの温帯の日本を一緒にしないで欲しいですね。その点、温帯に住んで観察して熱帯との違いを悟って古典を応用しているラッド先生は流石です)。

秋は日の出前、鳥がまだ寝ていて静かな時に起きるべきです。この時間(ブラフマムフルタ)には並外れた静寂と平和があります。アーモンドの殻を炒ったもの、甘草、ハリータキー、そして少量のミントを粉末にしたもので作られた歯磨き粉で歯を磨きます(日本でもアーモンドの殻以外は手に入りそうですね)。このハーブ混合粉末は口腔内、歯、歯肉のワータを鎮静します。歯磨きが済んだらタングスクレーパーで舌磨きをします。これを行うことで夜の間に育った歯周菌を取り除き、舌の上の反射区域を通じて内臓に刺激を与えることが出来ます。舌磨きを行うと軽い嘔吐反射が起きますが、これにより解決していない悲しみや悲嘆を喉の領域から手放すことが出来ます(なのでわたしは嘔吐反射によって出てきた生唾はなるべく吐き出すようにしています)。

次に、口の中いっぱいのぬるいごま油を口の中に2、3分キープしつつ動かしてから吐き出します(捨てても良いボロ布の上か、あるいはあらかじめ油と同量以上の液体洗剤を入れた容器の中のほうが良いですね)。人差し指を使って歯肉を外側も内側もこすって歯肉に油を塗りたくるようにします。

これにより、秋によくみられる歯肉の退縮を予防することができます。

 このあと温かいハリータキー茶でうがいをします。ハリータキー茶は茶匙1杯のハリータキーをコップ1杯のお湯の中に10分浸けてから濾して冷ましたものを用います。このハリータキー茶の代わりにハリー他キーを一晩、コップ1杯のお湯に浸けたものを用いても構いません。ハリータキーはワータを鎮め、正常な唾液が出るのを促進し、微生物を殺し、毒素を取り除き、歯・歯肉・舌を綺麗にしてくれます。この(オイルうがい後の)ハーブティーうがいが終わったら残ったハリータキー茶を飲むと消化管を綺麗にし、アパーナワーユ(5種類あるワータドーシャのリーダー的存在で、大腸に存在し主に排泄や生殖を司る)が大腸を綺麗にするよう刺激してくれます。

 歯ブラシの後、コップ1杯のぬるま湯を飲んでからアヌローマヴィローマ(交互に鼻の穴から息を吐き出す呼吸法(プラーナーヤーマ)のこと。日本語だと片鼻呼吸法、と。サンスクリット語ではナーディーショーダナとも言います)

を行います。この場合、プラーナーヤーマはトイレに行く前であっても行います(通常、プラーナーヤーマは早朝空腹時に排便を済ませてから行うとされているため)。何故ならこのプラーナーヤーマがアパーナワーユを刺激して便通を催すことがあるからです(そしてワータの悪化症状は便秘や排尿困難なので、温帯の秋は自然にワータが悪化しやすいためこういった症状が出やすいからです!!!)。

 アヌローマヴィローマは北か東を向いて(片方の鼻腔ずつ)普通に呼吸して行いますが、深いくつろぎをもたらし酸素を身体中に行き渡らせることで脳細胞を活動的で元気づけるためには吸ってから少しの時間(息を止めて)保持します。中枢神経系のストレスはこのアヌローマヴィローマで除去されます。

(このプラーナーヤーマによって便意を催したら)トイレを済ませた後でワータを鎮めるヨーガのポーズを行います。これらの中には蓮華座で座って前や後ろに倒れたり、

ヴァジュラーサナ(いわゆる正座のことです)や

ねじりのポーズ(アルダマッツェンドラーサナ)、

ラクダのポーズ、

コブラのポーズ、

牛の顔のポーズ、

猫のポーズ

などを含みます。肩立ちや頭立のポーズも出来る人は、激しくないように行えばワータドーシャの上向きの動きを調節することができます。

太陽礼拝のポーズは最低でも12セット、あなたの体力の半分を上限に行うべきです(あなたが初心者だったりとても体力のない人だったら12セットもできないかもしれません。体力の半分、あと今までと同じ回数をやれと言われてできるだけのところで止めること、疲れ過ぎないほうが大事で、体力が付けば回数は増えてきますので必ず最初から12セットやらないといけないということではありません)。

 最後に屍のポーズを行い、それからもう一度、片鼻呼吸法(アヌローマヴィローマ)を行います。12セット行ったら静かに座り、少なくとも10から15分の瞑想を行います。

 重要な点として、もしあなたが便秘がちで最初のアヌローマヴィローマを行なっても便意を催さなかったらその後のヨガはしないでください。もしその状態でヨガをすると悪化したワータが押し出され、毒素(アーマ)が深部の結合組織に入り込んで(病気の原因となって)しまうためです。

 もう一点、もしあなたが頻脈性不整脈(脈が平時でも毎分100回を超える)があったり呼吸が苦しかったり呼吸器に鬱血がある状態(うっ血性心不全や気管支炎など。まあ痰が出る状態と思っていれば良いです)の時にはプラーナーヤーマを行ってはいけません。同時に、あなたが悲しかったり抑うつ状態にあったり憂鬱な時にも行ってはいけません。

 一般的にはプラーナーヤーマは心を鎮めて知覚の明晰さを増してくれるので心は集中した状態となり瞑想的となります。シュリ オーロビンドーさんは偉大なるヨガ行者ですが彼は1日にプラーナーヤーマを150回行っていました。彼は強く健康で専念できる人で、人を感激させる詩人でありヨガ行者でした。

 秋は乾燥し風が強く涼しいので、これらによって乾燥肌や関節がボキボキ鳴ったり肩こりや腰痛を引き起こします。毎朝温かいごま油で全身をマッサージしてから温かいシャワーを浴びます。マハーナーラーヤナオイル

や、ワチャー(菖蒲)オイルやバラーオイル

などは秋に用いる薬用オイルとしては適しています。これらの薬用オイルでオイルマッサージをしてからひよこ豆の粉か大麦の粉で全身を擦り、湯船に浸かる前に余分な油分を落とします。市販の化学薬品入りの石鹸やシャンプーを使ってはいけません。オーガニックハーブのシャンプーや石鹸を用いるようにします。ニームかジャスミンの石鹸があれば非常に良いです(わたしはお風呂場の掃除が大変なので粉で擦る過程はすっ飛ばして椿油かオリーブ油から作った自作の石鹸を使っています)。

 シャワーを浴びたら清潔なタオルで体を乾かし、そして腰と首の領域をマッサージします。それから清潔な衣類を身につけます。熱いシャワーと冷たいシャワーを交互に浴びてはいけません。この行為はワータドーシャを悪化させるからです。

秋の食事)

この頃になるとあなたは空腹を覚えているかもしれません。温かいオートミール、米や小麦のクリーム、あるいはどんな穀物もワータドーシャを鎮めてくれます。キヌアは消化が軽く調理しやすいので(米や小麦以外の穀類として)候補の一つです。朝食は8時頃で昼食は正午頃にすべきです。

 昼食としてはワータを鎮静する食事、例えばバスマティライス(タイ米のような長細いお米ですね)やムング豆(=緑豆)のスープや蒸し野菜とおじやのようなものが望ましいです。全粒粉の小麦粉で作ったチャパティやトルティーヤはイースト菌で発酵させていないので、イースト菌で発酵させた普通のパンよりはワータを悪化させにくいです。秋はたくさんサラダを食べることは体に良くありません。というのは生野菜は消化力を弱め、ワータドーシャを悪化させ得るからです。

 ワータ体質の人は昼食後に短時間昼寝をすると良いでしょう。そうすることで悪化したワータが鎮静するからです。午後のスケジュールはあまり忙しくすべきではありません。というのは午後は(ことに日没近くは)ワータの時間だからです。夕飯は6時前後に食べるべきで、7時より遅くなってはいけません。蒸し野菜、ギーを入れたお米、どろどろになるまで煮崩れたスープが粗い性質(rough)を持つワータを鎮めるにはとても良いです。夕食後、ハルヴァ

穀物胡麻野菜、または果物油脂砂糖を加えて作られる菓子。東はバングラデシュから西はモロッコまでの広い地域に見られ、冠婚葬祭にまつわる様々な行事で重要な役割を果たすことが多い。ほとんどのレシピにはバターまたはギーが含まれるが、逆に一部では植物油を使う。ピスタチオ胡桃アーモンド松の実などのナッツ類やレーズンデーツなどのドライフルーツは必須ではない

や、皮むきアーモンドと小麦粉クリームのような小さなデザートを食べても良いです(ハルヴァは日本では普通には売ってないので、揚げてないけど油を使っているお菓子。が該当しますでしょうか。プチシューとか、油は使ってないけど日本風にいうならおはぎ?)。

夜は人々は休憩し、読書をし、リラックスすべきです。秋は力一杯行う運動は避けるべきです(涼しくなってきて運動の秋なんて言いますが「動き」はワータの性質の一つで、動きすぎるとワータが悪化するからです)。21時半か22時までに就寝します(朝が鳥もまだ寝ているくらい早くに起きるからですね!)。ハリータキーの粉末をコップ1杯のお湯に浸けて寝るのを忘れてはいけません(翌朝のオイルうがい後のすすぎに必要だからですね)。夜にトリファラーを摂っても良いです。トリファラーは夕食後1時間以上空けてから飲みます。

 秋にはホットミルクを飲むのも良いです。ホットミルクは自然で深い睡眠をもたらすからです。夜に飲む牛乳は男性においても女性においても生殖器を栄養するので、コップ1杯のホットミルクは少なくともトリファラーを飲んでから2時間は間を空けて飲む必要があります(アーユルヴェーダでは牛乳と果物の食べ合わせは日本で言うスイカと天ぷらのように食べ合わせが悪いとされているため)。

もしあなたがただぬるくなる程度に牛乳を温めた場合、そのぬるい牛乳は冷たい牛乳よりも消化に悪いのであなたの胃はぬるい牛乳を受け付けない可能性があります。ぬるくするのではなく、きちんと沸騰して鍋の中でブクブクと湧き上がってきてから火を消し、あなたのコップに注いで飲める程度に冷めるのを待ってから飲みます。このようにして作ったホットミルクは粘液を産生することはなく、あるいは胃でゴロゴロ音を鳴らすこともありません。

 もしあなたが牛乳を良く消化できない場合は牛乳をコップ4分の1、水をコップ4分の3入れて、ドライジンジャー、カルダモン、ナツメグをひとつまみずつ入れてから沸騰させます。それからゆっくりと水分量が牛乳より下回るまで(つまり半カップを下回るくらいまで)煮詰めるところから始めると良いでしょう。このようにしてあなたは自分の肝臓が牛乳を受け入れるように鍛えることができます。

 ただ、この方法は牛乳アレルギーを持つ人々には適切ではなく、そのような人は牛乳は避けたほうが良いでしょう。

 牛乳アレルギーの人はアーモンドミルクかライスミルクを試しても良いですが、これらの代替ミルクは牛乳とは違う性質を持ちます(ので必ずしも牛乳ほど安眠には働かない)。

 ピッタとカファが優勢な人には山羊乳が適していて、ワータとピッタが優勢な人には牛乳が適しています。

 夏と秋の間にパンチャカルマ(浄化療法)を受けるべきです。パンチャカルマに先立って2、3日スネハナ(アーユルヴェーダのオイルマッサージ)やスウェダナ(発汗法)やシローダーラー(額や第三の目に温かいオイル(や薬用の液体)を垂らす治療)を行います。これらの治療はワータドーシャを鎮め、リラックスさせ、ストレスと緊張を最小限にします。

バスティ(薬用油や煎じ液を用いた浣腸療法)はワータドーシャをコントロールするのに最重要なパンチャカルマの一つです。バスティを行うには1パイント(≒500ml)の水に茶匙2杯のダシャムーラを入れて5分間煮てダシャムーラ茶を作ります。5分後に濾してから冷まし、これを浣腸液として用います。もし大腸にアーマ(毒素)がない(水洗トイレで便が水に浮く)場合、このダシャムーラ茶に半カップの胡麻油を加えます。この浣腸液を注入して30分経過してからか、もしくは(30分経たないうちに)便意を催して浣腸液を排出せざるを得なくなってから、続けて別の半カップの胡麻油を直腸に入れます。

つまり、

便が浮く(アーマ無し)人:ダシャムーラ茶+胡麻油100mlの浣腸をして30分経つか30分以内に排泄→胡麻油だけ100mlをまた浣腸

便が浮かない(アーマあり)人:ダシャムーラ茶だけで浣腸をして30分経つか30分以内に排泄→胡麻油だけ100mlをまた浣腸

という流れです(なぜアーマありの人にダシャムーラ茶だけで浣腸をするのかというとアーマ、未消化物が腐敗してできた`or精神的ストレスで消化力が落ちて未消化になって腐ってできた毒素は「ベトベト」「ネトネト」といった性質を持ち、これらの性質はごま油も持っているので最初からごま油を使うとアーマを増やしてしまうからです。ダシャムーラ茶だけで腸のお掃除をしてからはアーマ無しの人同様、綺麗になった大腸をごま油で潤さないと乾燥してしまうので続いてごま油だけの浣腸を行うのです)。

 この2回目の胡麻油だけの浣腸を更に10分保持(量が少ないので多分大半の人に可能だと思いますが)することで大腸が油で潤い、ワータを緩和し、腰や頸部からストレスを除去してくれます。

 秋の間はオイルマッサージと発汗法なしで週に1回、浣腸を行うことができます。浣腸をする場合は早朝か、夕暮れ時の(日の出前4時間と日の入り前4時間、ワータの時間です)空腹時に行うと良いです。

【秋に避けるべきことリスト8つ】

・ワータを増やす食物

・乾物やガサガサした食べ物

・食事を抜く、または断食を行う

・食間にスナック菓子を食べ過ぎる

・冷たい、もしくは氷の入った飲み物

・遅寝

・冷たい隙間風や風に当たる

・過剰な性行為

如何でしたでしょうか。ワータドーシャを鎮静させることで風邪知らず、関節痛知らずな冬を楽しむために秋の養生もぜひ行ってみてください。

参考文献)

THE TEXTBOOK OF AYURVEDA VOLUME3 by Dr. Vasant Lad P.122-125

 

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