
立冬をかなり過ぎてしまいました。遅くなりまして申し訳ありません。季節が一か月進んだり戻ったりで服装に悩む今日この頃ですが皆様お変わりございませんでしょうか。
さて今回はルトゥチャルヤ、季節の養生法で冬ですね。インドの古典では季節は6つに分かれているとされていて、あんなに暑い国なのに、冬が初冬と極冬の2つに分かれています。初冬(日本で言うと11月中旬〜1月中旬。サンスクリット語でhemanta(ヘーマンタ)という)と極冬(日本で言うと1月中旬〜3月中旬、サンスクリット語でsisira(シシラ)という)に分かれていますが、正直、温帯育ちのわたしからすると初冬というかクリスマスの頃まで日本の真夏並みの暑さであるインドの「秋」が終わると一気に涼しくなって、クリスマスの頃ようやく半袖が辛くなってきてフリースの1枚も羽織るかな、って感じで、涼しくて気持ち良いな、もっと涼しくならないかな、と思っていると年明けから光が強くなってきて2月にはもう汗ばむ気温になってくるので、日本人からするとどこが冬やねん!!!!!って感じで、極冬より初冬のほうが涼しいのも納得がいかなかったですね。それでもインド人は寒がってあちこちで焚き火してましたけどね。
さてまたラッド先生の教科書に学ぶ、冬の健康的な過ごし方です。
冬には地球上の生命はみな活力が衰えます。ほとんどの場所では寒くてじめじめして曇りがちで荒れ模様になります。これらの寒い、湿った、曇りがち、荒れ模様、といった冬の性質は全てカファドーシャを悪化させます。寒さはカファとワータ、両方に属する性質なので、ある人は初冬にワータドーシャが悪化した徴候を経験します。このため、ワータ体質の人は秋の健康法をすっかり止めるべきではありません。
一般的に、全ての人は前の季節の養生法を徐々に変えるべきです。
一方でカファ体質の人々は冬の養生法に厳格に従う必要があります。
冬には午前7時ごろ起きても良いです。起きて舌磨きをすることで死んだ細菌を除去して内臓の循環を促します。それからシナモン、クローブ、ビルワ、ハリータキーといった熱性のハーブで作られた歯磨き粉を使って歯を磨きます。この種の歯磨き粉は歯を冷たさに対する知覚過敏から守るのに役立つことでしょう。
このあとであなたはカワラ(オイルうがい)をしても良いです。カワラとは口いっぱいに温かいごま油を含み、2、3分口の中でオイルを(飲まずに)ぶくぶくと口をすすぐかのように動かしてから吐き出すことを言います。最後に、温かいごま油で歯肉をマッサージします。これらすべてが終わったらコップ1杯の白湯を飲むと健康的な腸蠕動運動を刺激します。
次に、浴室が温まっていることを確認してからこれも温めたごま油を全身に塗ります。このオイルマッサージはサンスクリット語でアビヤンガ、と言われています。ごま油は熱性があるので冬季には全ての体質の人にとって外用するのに良い油です。ごま油を耳の穴にも注ぎ、鼻、唇、乳首、外陰部といった全ての外部への開口部をも油で潤します(訳注:わたしはグジャラートで外陰部はやめておけと習ったことと熱性の体質なので外陰部へのごま油の塗布は個人的には行っていませんがワータ体質の人、生理的にワータが増える老年期の人、排尿障害、便秘など骨盤内臓器の不調がある人は塗っても良いかもしれません)。それから熱いシャワーを浴びます。肌が濡れている間に体をひよこ豆か大麦の粉で擦り、余分な油を落とします。
しかし(こういった穀物の粉末を手に取り体を擦ることで余分な油を落とすという古典に書かれている手法は)これにより排水管が詰まるかもしれないことに注意する必要があります。ですのでこれら穀物の粉末の代わりに自然派石鹸やシャンプーを用いても良いでしょう(訳注:これら自然派石鹸やシャンプーが推奨されていないのはせっかく肌に塗った油分を落とし過ぎるからです。穀物の粉末、ことにひよこ豆の粉末は適度な油分を肌に残してくれるので古典で推奨されているのです)。
シャワーの後で排泄してから屋内での運動、ヨーガのようなものを行います。
スーリヤナマスカーラ(太陽礼拝)や
胸、喉、副鼻腔を開くポーズはカファにとって有益で、呼吸器にあるどんな鬱滞も取り除きます。
アーユルヴェーダは冬に行うべきヨーガのポーズ(アーサナ)としては、
魚のポーズ
舟のポーズ
弓のポーズ
橋のポーズ
バッタのポーズ
ライオンのポーズ
ラクダのポーズ
肩立ちのポーズ
頭立のポーズ
を推奨しています。これらのポーズはカファの座を強めることになるからです。これらのポーズを行っている間、深いウッジャーイー呼吸法
を行うと更に良いです。
それから右の鼻腔からの呼吸、スーリヤベーダナプラーナーヤーマ、つまり太陽呼吸を意味する呼吸法を行います。
左の鼻腔を優しく押さえてから、右の鼻腔からゆっくりと深く腹部まで息を吸い込みます。それから弱い咽頭反射が生じるまで両方の鼻腔を閉じて息を吸ったまま臍の裏に保ちます。この弱い咽頭反射が息を吐いても良いというサインです。
ゆっくりと左の鼻腔から吐き出し、また左の鼻腔を閉じて同様に右の鼻腔から息を吸い込みます。このように呼吸をするとピンガラナーディー(太陽エネルギーに関係する、プラーナの起源。脊髄の長さを通り7つのチャクラを出たり入ったりする)を刺激し、これにより肝機能を向上させ循環を促進することで体内の熱を増やします。もし右の鼻腔が鼻づまりだったらワチャーオイルを塗った小指を右の鼻腔に差し込んでナスヤ(点鼻法)のように鼻腔内壁に塗りたくりると良いです。
理想的にはナスヤは呼吸法の後で行われるべきですが。
もし呼吸法の前にナスヤを行うとあなたは少量のオイルを吸入することになり、息苦しくなるかもしれません。
ヨーガと呼吸法の後で、しばらく瞑想をします。冬は受身な、消極的な季節です。ですから急いで行ってはなりません。自然に従い、受け身な形での瞑想を実践します。
冬の食べ物
寒い天気は毛穴や体表の結合組織を収縮させます。これにより熱の損失が防がれます。末梢の組織からの熱は体内の胃のほうへ押し込まれます。よってジャータラアグニ(胃の消化の火)とその人の食欲は冬には強くなります。
シャワー、ヨーガ、瞑想をしたらオートミール、コーンミール、大麦のスープ、キチャリ(スパイス入りインドの野菜おじや)

やポーハ(バスマティ米のフレークを少量の油で炒めたインドのスナック風軽食。青唐辛子やピーナッツやコリアンダーの葉やカレーリーフが良く入っている。)

といった朝食を摂ります。
ポーハは消化が軽いので、カファ体質の人にとっては良い朝食ですが(体質的に消化力の強い)ピッタ体質の人にとっては十分でないかもしれません。そんな人たちはオートミールにしておいたほうが賢明です。
朝食後30分してから生姜、シナモン、クローブ入りのお茶を飲むと消化力を維持し、循環を良くし、体から粘液を除去します。茶匙半分の乾姜とシナモンに、クローブひとつまみを用います。もしあなたが潰瘍持ちなど非常にピッタが悪化している場合はこのお茶を飲んではいけません。むしろピッタを緩和する食養に従うべきです。
そのような場合、冬にピッタドーシャを鎮静するには外側から体を暖かくして、内側からは涼しくするのを保つことです(訳注:ピッタ過剰の人が飲むならカルダモンやコリアンダーなどの冷性なお茶が良いということになります)。
冬の色は白、黒、灰色です。これらに釣り合う、平衡させるには人々は明るい暖色、例えば赤やオレンジ色がオーラ層に火のエレメントを保つのに役立ちます。冬の寒い時には帽子を被るべきです。というのは半分以上の体の熱は頭部から失われるからです。それに加えて耳や首も暖かさを保つには覆うべきです。
お昼までに恐らくあなたはとてもお腹が空くことでしょう。そうしたらその時間に昼食にします。カファを鎮静するがワータを悪化させない食べ物を選ぶべきです。
イーストを使っていない全粒粉のパン、蒸し野菜、ギーを使った温かいスープが良いです。
小麦は熱を保つのに役立ちます、というのは小麦はベジタリアンにとっては肉のようなものだからです。もしグルテン過敏症があるならキヌアのような穀物でできたパンに(小麦粉のパンの代わりに)置き換えても良いでしょう。
肉食の人にとっては、アーユルヴェーダは消化力が強まるので冬は肉を食べるのに最適な季節だと言っています。消化を助けるのにシナモン、クローブ、黒胡椒といったスパイスを加えると良いです。冬の間は食後に昼寝をしてはいけません。というのは昼寝はカファを増やすので代謝を遅らせるからです。カファ体質の人は夏に短時間昼寝することしか許されません。
冬の間夕食はあまり遅くてはいけません。午後5時から7時の間がベストです。寝る前に、ワータを鎮めるために少量の温かいごま油で足底と頭部をマッサージします。冬には午後10時から11時の間に就寝するようにします。アーユルヴェーダはこの季節には他の季節より頻繁に性行為すべきと言っています。性行為後にはオージャス(免疫力、生命力に例えられる)を増すためにひとつまみの生姜とカルダモンを入れたコップ1杯のホットミルクを飲むべきです。
健康な人々はその健康を維持するために標準的季節の養生法に従います。しかしもし何かバランスが取れていないところがあったり病気がある場合はそのような人はその人の固有のドーシャの不均衡に合わせた食事と生活の養生法に従う必要があります。
一般的に、冬は健康的な季節で、分別をわきまえているバランスの取れた人は力強く、健康で、活気に満ちた季節に感じます。カファが悪化しているカファ体質の人は標準的な冬の養生法に従うべきですが、ワータが悪化している人は第一にワータを鎮静させる養生法、加えてカファもそんなに悪化させない養生法に従うべきです。もしカファが常に悪化しているのならそういった人は冬に病気になるかもしれませんし、カファ性の病気、例えば風邪や副鼻腔炎、咳、気管支炎といったカファ性の病気になるかもしれません。
冬はたいてい少し日が差すだけで曇りがちでどんよりとした天気の日々です。これによりタルパカカファ(5種類あるカファのサブタイプの一つで頭部が主座で感覚器を潤す役割を持つ)が悪化し、それによりサーダカピッタ(5種類あるピッタのサブタイプの一つで主座が心臓(又は脳)で知識、知性を司る)とプラーナワーユ(5種類あるワータのサブタイプの一つで主座が脳で胸郭まで動き、意志の力、感覚器、心臓、知性、視覚を調整する)を抑制するために抑うつ的になります。人々は不活発となり頭は回らなくなりやる気を失くします。アグニ(消化の火)は燃え上がらせる必要があります。このような人は(やる気を出すために)サラスワティー(知恵の女神様の名前です)と呼ばれる複合ハーブ製剤を服用しワチャーオイルの点鼻をしても良いですし、冬の養生法を厳密に守るのでも結構です。こうするとことにうつ病を患っているカファ体質の人に役立ちます。
ワータ体質の人とカファ体質の人は冬に孤独を感じがちなのでこの時期にパートナーと別れるべきではありません。中も外も寒い時に一緒に眠る人がいないと自然に孤独を感じるようになるからです。冬に連れあいがいることは素晴らしいことです。
特定のありふれた薬草が冬にカファドーシャを調節するのに使われます。最も良いものはプナルナワー、甘草、生姜、長胡椒、黒胡椒、チトラカ、クタキでこれらは全てカファを緩和します。
特定のアーサワ(発酵させた薬草の絞り汁)とアリシュタ(発酵させた調合薬というか煎じ液)はたいてい冬に良く用いられます。アーサワは消化力が低下している場合に適していて、アリシュタはダートゥアグニ(体組織を栄養する力のこと。体組織の数に合わせて7種類ある)が低下している場合に適しています。アーサワは消化管の毒素を燃やすので、消化力を強めるには空腹時に飲むのが最適です。
アリシュタはダートゥアグニ(体組織を栄養する力)とブータアグニ(空間・風・火・水・地の宇宙を成り立たせる最小の5種類のエレメントに変換する力)に火をつけるので食間か食後に飲むのが適していて、テージャス(知性と理性を維持し養う力)とオージャス(7種類の体組織のエッセンスで免疫力、生命力に近似した存在)を増し、ダートゥから毒素を排出します。特定のアリシュタは非常によく効き、細胞の代謝を燃え立たせます。ピールアグニ(細胞膜に存在し細胞を栄養する)とピタラアグニ(細胞の核、DNAを養う)です。
冬に最も適しているのはドラークシャー(黒干し葡萄から出来た薬用酒)、ピッパリーアーサワ、クマーリーアーサワ、プナルナワーサワ、ワーサカーサワ、ダシャムーラーリシュタなどです。
茶匙4杯のドラークシャーまたは他のアーサワかアリシュタに同量の水を混ぜて飲みます。このことで循環を促進し、消化を増し、カファを調節し、ワータを鎮めます。もしアーサワかアリシュタが手に入らなかったらアーユルヴェーダは冬の間は食事と一緒にごく少量の辛口のワインを飲むのは構わないと言っています。
冬の良いラサーヤナ(若返りの強壮剤)はチャワーナプラーシュ(若返りの王様・アムラがメインとなった種々のハーブが混ざった甘い舐め剤。消化力の強い人でないと摂取してはいけません。)とピッパリーラサーヤナです。
ピッパリーラサーヤナは殊に強力です。カップ半分の牛乳と水に5つのピッパリー(長胡椒)の実を入れます。ピッパリーは粉末ではなく実のままでないといけません。この混ぜ物を、水分が蒸発するまで(つまり体積が半分になるまで)30分そこらかけて煮詰めます。これを就寝前に飲みます。牛乳は冬には粘液を産生するかもしれませんが、この混合物を飲めば粘液は生じません。
秋と冬の間は人々はパンチャカルマを受けるべきです。ことにカファの問題(肥満、喘息など)を抱えている人は受けるべきです。
多すぎるカファドーシャはワマナ(催吐法)で除去できます。多すぎるカファを胃、肺、副鼻腔、リンパ組織や他のカファの部位から除去するのです。他の残った余剰のカファはワチャーオイルのナスヤ(点鼻法)かワチャー粉末のナスヤ(嗅ぎタバコのように粉末を鼻腔に吸引する)を数週行うことで除去できます。パンチャカルマは熟練した、胃の脈が読めるアーユルヴェーダドクターの指示の元行うべきです。脈でカファのスパイクが見られたらこれはカファがうまく悪化させられて胃に戻っているというサインです。これをウトクリシュタ(訳注;直訳すると興奮状態、励起状態というか、パンチャカルマ、「浄化療法によって体外に排出させる準備が整った症候を伴うドーシャの悪化状態」です。大抵カファドーシャの場合に用いられる用語で、嘔気を伴ったら浄化療法、この場合はワマナの準備が整っていると見做されます。ワマナの前の晩にわざとヨーグルトとか揚げ物とか食べてカファを悪化させるのもこのウトクリシュタ状態にするための最後の仕上げな感じですね)と言います。
それから甘草茶が供されその人は余剰のカファを吐くことで取り除きます。
概して冬には静かに、暖かくて幸せでいて良いパートナーを持ち室内で運動をすることです。そうすることであなたの人生はより幸せで健康で神聖なものとなることでしょう。
冬の風邪や鼻詰まりを緩和するアーユルヴェーダの三大ハーブ調合薬;
- シトパラーディ、マハースダルシャン、甘草:
茶匙半分のシトパラーディに茶匙4分の1ずつのマハースダルシャンと甘草を混ぜます。
茶匙1杯を1日3回必要時に茶匙1杯の非加熱蜂蜜と共に飲みます。これは去痰作用が必要な(ドーシャ)不均衡に対する良い処方です(インドで風邪をひくとよくシトパラーディは出されましたが正直あまり効いた覚えがないです。マハースダルシャンと甘草と合わせて飲んだことはなかったですが。氷砂糖が入っているので結構甘い薬です)
- ターリーサーディ、トリカトゥとニーム;
茶匙半分のターリーサーディと茶匙4分の1ずつのトリカトゥ(三辛、乾姜・黒胡椒・長胡椒の等量混合物を言う)とニームを混ぜます。これも茶匙1杯ずつ1日3回、必要時に茶匙1杯の非加熱蜂蜜と共に飲みます。これはとりわけ鼻詰まりに良く効きます(インドで蓄膿症になるとよく出されてそれなりに効いたので良くお世話になりました。ターリーサーディワティ)。
- プナルナワーディグッグル
これはカファとワータ性の多くの疾患に用いられるのでことに冬に役立ちます。用量は個々の理由により異なります(最近グッグル製剤はインド国外への輸出が禁じられたようで悲しいです)。
冬に避けるべきこと
・カファかワータを増やす食品を避ける
・甘いもの酸っぱいものしょっぱいものを大量に摂る(カファを増やす)か、苦いか渋い食べ物を大量に摂る(ワータを増やす)こと
・食事を抜いたり断食するのを避ける
・冷たかったり氷の入った飲み物を避ける
・夜ふかしを避ける
・冷たい隙間風や風への曝露を避ける
・完全に「動かない」ことを避ける