65)シャンカプシュピー(Śaṅkhapuṣpī)(冷辛)(チョウマメ)

シャンカ=巻貝、プシュパは花のことですから「巻貝のような形をした花」という意味の名前です。

☆花と葉(Convolvulus pluricaulis, 以下CP)

☆CPの乾燥根

☆花と葉(Evolvulus alsinoides、以下EA)

☆花と葉(Canscora decussata、以下CD)

☆花と葉(Clitorea ternatea 、以下CT)(蝶豆)

【学名】
Convolvulus prostratus

【科】

ヒルガオ科(Convolvulaceae)

【亜種】

シャンカプシュピーには亜種がいくつかあり、ニガントゥ(薬学用語集)やドクターごとに「これがシャンカプシュピー」という植物が異なります。

いくつかのNighaṇṭuではビシュヌクラーンターという名の植物もシャンカプシュピーの亜種のうちの一つであると言っています。例えばŚodhala nighanṭuはシャンカプシュピーには白い花と青い花の2種類があり、青いほうがViṣṇukrāntā(EA)であるとしています。

 しかし薬草学では権威のあるBhāvapurakāśaではビシュヌクラーンターはアパラージタという別の植物の異名であるとしていて、これはシャンカプシュピーとは全く別物です。

 また、Kaiyadeva nighaṇṭuではシャンカプシュピーは赤と青い花の2種類あるとしています。

 

 多くの臨床家は(多数の著作がある薬学の権威であるギャネンドラ・パンディ教授も臨床家として世界的に有名なヴァサント・ラッド先生も)EAがシャンカプシュピーであるとしています。

インド医学研究評議会はCPをシャンカプシュピーであるとしているので本稿もそれに倣いましたが、個人的には異名からすると、チョウマメの和名を持つCTが一番巻貝の形に似ていて白い花の亜種もあるので、CTがシャンカプシュピーらしいなと思います。


【同義語・異名】

ブーラグラハ(Bhūlagraha):シャンカプシュピーは地面に生える

ブーティラカ(Bhūtilaka):この植物は魅力的な花が咲く

カンブマーリカー(Kambumālikā):花々は巻貝のように白い

カンブプシュピー(Kambupuṣpī):花々は牛乳のような白色

クシーラプシュピー(Kṣīrapuṣpī):花々は牛乳のような白色

マーンガルヤクスマー(Māṅgalyakusumā):縁起の良い植物であると見なされている、というのは(花は)白色であり形は巻貝、両方とも良い予兆であるからである。

マノーラマ(Manorama):この植物は魅力的な花が咲く

メディヤ(Medhya):向知性作用がある

シャンカフワー(Śaṅkhāhvā):シャンカ(巻貝の一種)の全ての同義語がこの植物には使われる

シャンカクスマー(Śaṅkhakusumā):花々は巻貝のように白い

シャンカマーリニー(Śaṅkhamālinī):花々は巻貝のように白い

シータプシュピー(Sītapuṣpī):花々は巻貝のように白い

Speed wheel (英名)

スプシュピー(Supuṣpī):この植物は魅力的な花が咲く

ティラキー(Tilakī):この植物は魅力的な花が咲く

ワナビラーシニー(Vanavilāsinī):花が咲いた場所は素晴らしい

チョウマメ(CTの和名)

【ガナ/クラ(古典における分類)】
ガナ)

Dr.Lad’s 24 dravyas

      
クラ)
trivṛtkula


【ラサ(味)】
渋辛苦

【グナ(性質)】
油粘重流動性

【ヴィールヤ(効力)】

冷性

【ヴィパーカ(消化後味)】

【プラバーワ(特異作用)】

向知性作用

【ドーシャへの影響】
トリドーシャハラ(3つのドーシャ全てを除去する)


【スロトガーミトワ(経路・臓器・組織行性、親和性。特に作用する部位のこと)】
ドーシャ: ワータシャーマカ
体組織(ダートゥ):マッジャー、シュクラ、マナ

老廃物(マラ):便

スロータス:マノワハスロータス(心の通り道)

内臓:脳



【カルマ(作用)】

過剰なカファを液体にして排出する(Kaphaniḥsāraka)

向知性作用(Medhya)

向知性作用(Mastiṣka nāḍībalya)

鎮静作用(Śāmaka)

催眠作用(Nidrājanana)

若返り作用(Rasāyana)

向知性作用(Medhya rasāyana)(脳の認知力を高める、英語だとnootropic)

声に良い(Svarya)

育毛作用(Keśavardhana)

体力向上(Balya)

緩下作用(Anulomana)

強心・心保護作用(Hṛdya)

止血作用(Raktastambhana)

降圧作用(Raktabhārahrāsaka)

難治性皮膚病を治す(Kuṣṭhaghna)

関節炎を治す(Raktavātaśāmaka)

容易いかつ適切な排尿を助ける(Mūtravirecanīya)

催淫作用(Vṛṣya)

受胎促進・抗催奇形性・安胎作用(Prajāsthāpana)

【適応(ローガグナタ)】

発熱(Jvara)

トリドーシャ性発熱(Tridoṣaja jvara)

衰弱(daurbalya)

消化力低下(Agnimāndya)

腹部疾患(Udaravikāra)

腹部膨満(Ānāha)

腹部腫瘤(Gulma)

痔疾(Arśa)

便秘(Vibandha)

灼熱感(Dāha)

熱感(Santāpa)(主に感覚器が熱く感じて精神的にもイライラすること)

日射病(Aṁśughāta)

心臓病(Hṛdroga)

出血性疾患(Raktapitta)

高血圧(Raktabhārādhikya)

皮膚病(Carmavikāra)

難治性皮膚病(Kuṣṭha)

血液疾患(Raktavikāra)

カファピッタ性咳嗽(Kaphapaittika kāsa)

嗄声(Svarabheda)

ワータ性疾患(Vātavikāra)

せん妄(Pralāpa)

脳機能低下(mastiṣkadaurbalya)

脳疾患(Mastiṣkaroga)

記銘力低下(Smṛtihrāsa)

記憶障害(Smṛtibhraṁśa)

精神異常(Unmāda)

てんかん(Apasmāra)

不眠症(Anidrā)

眩暈(Bhrama)

排尿困難(Mūtrakṛcchra)

膿尿(Pūyameha)

精子減少症(Śukradaurbaly

精液の異常(Śukradoṣa)

子宮機能低下(Garbhāśaya daurbalya)

切迫流産(Calitagarbha)

【薬用部位】
全草(paṅcānga)、花、葉、根

【用量・用法】
粉末:3-5g

温浸出液:40-80ml

搾り汁:20-40ml

カルカ(ペースト): 10-20g

【含有化合物】
アルカロイドとして、

Convolamine, convoline, convolidine, convolvine, confoline, convosine, shankhapusphine

炭水化物として、

D-Glucose, maltose, rhamnose,sucrose

フェノール/グリコシド/トリテルペノイドとして、

Scopoletin, β-sitosterol, ceryl, alcohol, 20-oxodotriacontanol, tetra triacontanoic acid, 29-oxodotriacontanol

フラボノイドとして、

Kaempferol

ステロイドとして、

phytosterols

【使用例(āmayikaprayoga)】

外用)

シャンカプシュピーの根と葉、それにジャタマーンシーの根を混ぜたものを絹の小袋に入れて枕の下におくとぐっすり眠れるか、7日間霊的な夢を見る。

内服)
・精神病においてはシャンカプシュピーの新鮮な搾り汁10-40mlを与えると良い。瀉下作用もあるので精神異常症状が緩和される。

・てんかんと認知症においてはブラーフミーの搾り汁とワチャーとクシュタとシャンカプシュピーを古いギーと煮て与えると良い。

・シャンカプシュピーをブラフミーとジャタマーンシーを茶匙半分〜1杯ずつ等量に混合する。その混合物を茶匙半分〜1杯を取り、非加熱蜂蜜茶匙1杯と混ぜたものを1日3回飲むと精神異常とてんかんに良い。この処方はADHDの小児や集中力に欠ける子供にも良い。

・便秘、腹部腫瘤、鼓腸に対してはシャンカプシュピーの根を便を柔らかくするために投与する

・慢性咳嗽と呼吸困難に対して葉を薬用煙吸入として用いる

・血性帯下と喀血に対してシャンカプシュピーの搾り汁が良い

・膿尿、排尿困難と精液の異常、子宮の異常に対してもシャンカプシュピーの搾り汁は有用である。

・シャンカプシュピーの若返り作用はことに知能を発達させる

・高血圧に対してシャンカプシュピーの新鮮な搾り汁10から20mlを1日に2回しばらく飲ませると良い

・小児の血尿に対して2gのシャンカプシュピーと1gの黒胡麻を混ぜて牛乳と一緒に与えると良い

・妊娠中毒症に対して茶匙1杯のシャンカプシュピーにお湯を注いだシャンカプシュピー茶が良い。

もしあなたがシャンカプシュピーを毎日飲めば性格が改善され、人々はあなたに惹きつけられるようになりあなたの知性に影響されるようになる。

【処方例・主な適応】

シャンカプシュピータイラ(Śankhapuṣpī taila)・小児疾患、知能向上

マーナサミトラワタカ(Mānasa mitra vaṭaka)・精神障害、知能向上

サーラスワタチュールナ(Sārasvata cūrṇa)・知能向上、(健康な精神状態を保つために)活力を与える

アインドリラサーヤナ(Aindri rasāyana)・てんかん、精神異常

ブラフマラサーヤナ(Brahma rasāyana)・延命、若返り

アガスティヤハリータキーアワレーハ(Agastyaharītakī avaleha)・咳嗽、消耗性疾患

【注意・禁忌】
特に毒性は報告されていない。ハツカネズミの実験で200mg/kgを超えて投与すると鎮静効果が認められたとのこと。

【1行まとめ】

強心で生殖器にも作用し、若返り作用もあるチャラカが認めるベスト向知性薬


【臨床小話】

内科学の古典書であるチャラカ・サンヒターの「アンタが1番!」シリーズで向知性薬のナンバーワンとして挙げられているのがこのシャンカプシュピーな訳ですが、わたしは何故かピンで飲んだことがありません。ブラーフミーとかマンドゥーカパルニーばかりでしたね。

古典には載っていない、現代で創薬されたオリジナル処方にプラシャン、というのがありまして、マハーラーシュトラ州で診察をしているヴァサント・ラッド先生やサダナンダ先生がよく眠前にシャンカプシュピーが原料の一つである「プラシャン」という処方を眠剤のように出してくださいましたが、あまりわたしの不眠には効いてくれたことはありませんでした。

他の向知性薬と違って「性格も良くなる」とあるので人格障害やサイコパスの人に是非使ってみてもらいたいなと思いました。

既に述べた様に亜種が4つもあってどれもあまり似てないという植物ですが日本においてチョウマメだけは入手が容易です。

通販のiHerbで花の粉末が手に入りました。

https://jp.iherb.com/pr/wilderness-poets-blue-butterfly-pea-flower-powder-3-5-oz-99-g/88884

ちょっともう時期としては過ぎていますが園芸品種として苗や種子も売っているみたいなので

https://item.rakuten.co.jp/tahiti-marche/butterflypea-pot/?iasid=07rpp_10095___ex-m0a624te-6n-abab8dac-418d-4ecf-83c2-1e4955107475

庭のある方やプランター園芸をされている方は栽培してみると花だけではなくて全体が向知性薬として使えるのでそちらのほうがお得かと思います。

わたしはiHerbの粉末を買ってみたのでしばらく非加熱はちみつで練って食べて(飲んで?)みようと思います。

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