健康的な四季の養生法(ルトゥチャルヤ)総論

本当はこの「総論」を四季の養生法の前に出せたら良かったのですが遅くなりましてすみません。

こちらはアメリカとインドで臨床医・教育者として世界的に有名なヴァサント・ラッド先生のこの本の↓

P106〜P 112の翻訳になります。

インド在住で、自分の国から出たことのないインド人の先生は、アシュタンガ・フルダヤムですとかチャラカ・サンヒターといった古典に忠実にしか教えてくれないんですよね。留学生の大半は温帯ないし寒帯出身者でしたし、わたしも長期に日本以外に滞在したのはインドが初めてだったので自らの実体験としてあの六つの季節を体験しないとなかなか理解は難しかったように思います。

そして温帯日本出身者のわたしとしましては、授業で古典通りにしか教えてくれない中身に不満もありました。真夏の次に長い雨季なんか来ない日本でどうせいって言うんじゃ!!!と思っていました。

 その点、この本の著者のラッド先生はアメリカとインドに1年の半分ずつ住んで両方体験された上で書かれているので、わたしの抱いた疑問に対する答えがほぼこの総論にありました。ので直訳風で申し訳ありませんが、和訳してお届けします。サダナンダ先生がプネー市のティラクアーユルヴェーダ大学で学位を取られた際、ラッド先生が口頭試問担当教官だったそうですよ。

時間は日の出と日没、そして月の満ち欠けに影響されている。月は冷たく静かで落ち着いていて、心地良く穏やかで主にカファの性質を持つ。月のエネルギーが優勢な夜間に湿度が増えることが示すように月は大気中の水分量に影響する。逆に太陽は火の神である、というのは日中は大気が乾くからである。太陽は第一にピッタの性質を持ち、第二にワータ(熱ですが「乾燥」をもたらすからですかね)の性質を持っている。

 アーユルヴェーダの文献では1年を半分にし、季節を2つのグループに分けている。一つは冬至から冬の後半と春を経て夏至に至るまでのもので、これをサンスクリット語でアーダーナ(脱水を意味する)と呼び大気中に苦味・渋味・辛味が優勢となる時期である。この時期は太陽に支配され、北半球ではアーダーナの期間中太陽は北に向かって動く。アーダーナの日々はより明るく(日光の強さが)厳しくなり、火の要素が強まるのに従い大地から水分が吸収され、大気が乾燥するのである。結果として人々のエネルギーは減少し、疲労が増し回復力が落ちる。

 第二の半年間はサンスクリット語でビサルガ(水分保持を意味する)と言う。太陽は弱くなりこの期間は月の性質が優勢である。夏至に始まり雨季(インドや周辺の熱帯で見られる季節)、秋と初冬から冬至に至るまでの期間を指す。このビサルガの時には北半球では太陽は南を通るので天候は寒さを増していく。ビサルガの時には大気中には酸味塩味甘味が優勢となり、これらの味覚を、人を含む生物に生じる。このビサルガの時期の遅くまでに熱は減少し人々は強くたくさんのエネルギーに溢れ、冬至にピークを迎える。

 このビサルガとアーダーナのバランスをサンスクリット語でヴィクシェーパと言い、大気中のドーシャのバランスが取れた状態を意味する。ヴィクシェーパは中庸の時期である春分と秋分に起きる。正確な冬至と夏至には太陽は南にも北にも現れず、宇宙のプラーナとアパーナの間の移行期でありそれ故神聖な時期である。

季節の・1日のドーシャのサイクル

サンスクリット語の“rutu(ルトゥ)”とは季節ごとの時の移行を意味する一方で”charya(チャルヤ)”はルーチンまたはライフスタイルを意味する。よって”rutucharya(ルトゥチャルヤ)”は季節のルーチンもしくは季節のライフスタイルのことである。

 適切な季節のルーチンを選ぶには私たちはまず季節の重要性、その性質、優勢な要素、関連するドーシャとその季節ごとに起きうる典型的な病気についても理解する必要がある。どの季節も体の細胞、臓器、器官や三つのドーシャに影響を与え、結果として心に微細な感情の変化をもたらす。

 アーユルヴェーダによるとヒトは自然を反映した縮小図である。全ての生物のように季節にもプラクルティ(性質もしくは体質)がある。温帯において春のプラクルティはカファで夏のプラクルティはピッタで秋はワータである。従ってカファの異常は春により起きやすく、ピッタの異常は夏に現れやすくワータの異常は秋に起きる。冬は概してカファの季節で、風邪や他のカファ性疾患が良く見られるが乾燥した地域ではワータの性質も併せ持つことがある。

 一旦私たちが現行の季節の一般的法則を知れば私たちはそれを日々のルーチンに当てはめ、それが季節のヴィクルティ(ドーシャの不均衡の現状)の形であっても、どんな天候のバリエーションに対しても修正することが出来る。人々にヴィクルティ(ドーシャの不均衡の現状)があるように、季節にもヴィクルティがある。

 季節外れの天気はその季節の異常な性質に起因する。ある種の、季節のヴィクルティのようなものである。よって1日の時間帯、天候のタイプ、もちろんその季節もそうだが、それらに応じた適切な養生法を選択する必要がある。

 暦通りにはいかないし、ある季節が特定の日に始まるだろうとも言えないのでその季節全体のためのある種のやり方で行動すべきである。

 例えば、とある秋の日に、霧が出て寒いかもしれない。その場合私たちはあたかも(秋でも)冬であるかのように振る舞う必要がある。しかし他の秋の日が暑く晴れていたならば、そのような場合には私たちはあたかも(秋でも)夏のように振る舞う必要がある。

 さらに、どの地理的地域においても少し異なる季節があるので私たちは特定の地域、という観点から季節の性質を観察する必要がある。

 ある場所の夏は比較的涼しいかもしれません。その場合は温帯の、冬により近いことになる。そのような場合、単に夏だけではなく夏と冬の養生法に従うようにする。その一方で、他の地域では夏は非常に暑く晴れているかもしれない。そのような地域の場合、体を冷ますには非常に厳格に夏の養生法に従い、食事とライフスタイルを変えなければならない。

 最後に、私たちは現時点のその人の体質とドーシャの不均衡に従う必要がある。例えば春は大半の人にとっては健康的な季節だがカファ体質の人と、カファが悪化している人にとっては春の風邪や花粉症にかかるような極めて不健康な季節になり得る。同様に、ワータ体質の人は大抵真夏が良い季節である一方、秋冬はワータの不均衡のために辛い季節となる。(ワータ体質の人にとって快適な)夏はピッタ体質の人には一番不健康になる季節で、下痢・発疹・日焼けになりやすい。あなたのピッタドーシャが悪化していた場合、冬は概して健康でいられる季節ある。というのは冬の寒さがピッタの熱性を緩和するためである。

それゆえにピッタ過剰の人は標準的な冬の養生法に従うべきではない。その代わりに冬と夏の養生法を混ぜて行うべきである。季節の影響から守るために、外側は体を暖かく保つべきだがピッタを緩和するため内側は体を涼しく保たないといけない

同様の原則は全てのドーシャの不均衡に適用される。この気づきに従うことは外側の生態系と私たちの内なる生態との間に均衡を生じる素晴らしい方法なのである(これすごい重要な事なのに、インドでは教えてもらえなかったです…)。

季節の特徴

表はインドの大半の州において季節とその影響が各々のドーシャに与える影響を表にしたものです。もっとも特殊な地域によっては幾分変わってくるが。これらはインドのアーユルヴェーダの古典で議論されてきた伝統的な六つの季節である。

 おおまかにこれら六つの季節は北アメリカのそれに適用出来る。以下は各々の季節で見られる典型的な性質の例だが、一部のインドの地域における各々の季節の間の状態はこのリストに限らない。

  • ワサンタ…アメリカ北東部の春に類似
  • グリーシュマ…アメリカ南西部の夏に例えられる
  • ワルシャー…アメリカ北西部の春か秋に似ているが、もっと激しい雨が降る
  • シャラド…アメリカ南部の夏に似ている
  • ヘーマンタ…アメリカ中西部の秋に類似している
  • シシラ…アメリカ中西部の穏やかな冬に相当する

インドのカレンダーは平均的な西洋の四季に以下の表のように置き変えることができる。

【西洋の四季とドーシャに与えるその影響】

【インドの季節とドーシャに対するその影響】

※1: シシラ(極冬、晩冬)はプラブルシュとも言う。

※2: タイミングは地域によって異なる

【わたしのジャムナガール&プネーでのインド留学生活における体感・実感による四季の移り変わりの実際】

最も重要なことは、原則として一つのドーシャがどの季節においても激化するので1年のその時期に特定のドーシャを殊に制御しなければならないということである。

夏はピッタが激化し、胃酸過多、下痢、蕁麻疹、皮疹、湿疹を引き起こす。

秋はワータが悪化し、一般に便秘、リウマチ、関節炎(個人的には喘息は秋にも入ると思いますが)を引き起こす。

冬はカファ(ことに頑丈な性質)が悪化し、風邪、鼻詰まり、咳を引き起こす。

春はカファ(ことに流動性)が悪化し、気管支喘息、花粉症、アレルギー、鼻水等を引き起こす。その後晩春にピッタが増加し、アレルギー性結膜炎や皮疹等を引き起こす。

季節の移り変わりと浄化

アーユルヴェーダはルトゥサンディ(ṛtu sandhi)を2つの季節の間の移行期と定義しており、一般的にある季節の最後の15日と次の季節の最初の15日とされている。この考えは建物の内部に住むために外から入ることに似ている。ドアはある季節の出口であり、次の季節の入り口でもある。この期間に服装、ライフスタイル、季節の特性を古い季節から新しい季節のそれへと変えるべきである。

 アーユルヴェーダは個々に対しこの季節の移行期に適切な浄化プログラム、例えばパンチャカルマ療法のようなものを行うよう推奨している。個人の体質と病気の性質によってパンチャカルマの冒頭の方法を5、7、15日間行うことができる。そうすると適した浄化療法の準備が整う。(それに続く浄化療法の)オプションとしては、以下のものが挙げられる。

ワマナ(治療的吐法): ワマナは冬と春の間に行うことが推奨されているが時に秋と冬の間にも行われる(これは日本や欧米など四季が4つの国の話で、インドではカファが最大になる春にワマナを行うよう古典には書かれています)。ワマナは過剰なカファドーシャとカファが引き起こした毒素を胃や他のカファの部位(関節など)から取り除く。春になる前に行われれば(春に生理的に起きる)カファの増悪を予防するのに役立つ。

ヴィレチャナ(瀉下療法): ヴィレチャナはピッタドーシャとピッタが引き起こした毒素を小腸や他のピッタの部位(肝臓、皮膚、目など)から取り除く。春と夏の間に行われるべきである(訳注:これは欧米や日本など季節が四つあるの国の話です。インドは既に書かれている通り春→梅雨→夏、の順ではなく春→夏→雨季→秋、の順に季節が巡るので、インドにおけるヴィレチャナの最適な時期は、インドでは秋にピッタが悪化するとされているため、インドの古典には最大になる秋に行うべし、と書かれています)。ヴィレチャナにより(余剰な)ピッタが体から出ていくため、(続いて訪れる)夏をピッタの悪化がより少ない状態で楽しむことが出来る。

バスティ(薬用ハーブ煎じ液ないし薬用オイル浣腸): バスティは夏と秋の間に行うようアドバイスされ、そのようにすると秋と冬にワータの異常なく過ごせる(これも日本や欧米など季節が4つの国の話で、インドにおけるワータが最も悪化する時期は長い雨季なのでバスティも雨季中に行うよう古典では指示されています)。バスティは大腸や他のワータの部位(脳神経系や呼吸器など)から余剰なワータとワータに由来する毒素を取り除く。

ラクタモークシャ(瀉血療法): ラクタモークシャはピッタとピッタに由来する毒素を造血系から取り除きます。慢性的な皮膚病や肝脾腫、痛風や糖尿病患者における壊疽に対し行われる。ラクタモークシャは余剰のピッタを除去するばかりでなく、ラクタダートゥ(血球に近似したアーユルヴェーダの言う7つの体組織の一つ)にある他の余剰ドーシャや毒素も除去してくれます。ラクタモークシャは晩春に行うべきで、インドではシャラドルトゥ(秋のこと。地域によるが9月〜10月に相当)に行うべきとされている。ラクタモークシャだけはアーユルヴェーダ医の適切な指導の元行うようにしてください。

ナスヤ(点鼻療法): ナスヤは神経系から余剰のドーシャを取り除くのに役立ちます。ナスヤは脳と意識の入り口である鼻腔を通じて投与します。点鼻するものは薬用オイルやギーやハーブの粉末で、浄化療法の最中にでも後にでも、どの季節にも行うことができる。ことにギーを使うナスヤは、いつ何時でも日々続けて行うのに適している。

これらの治療法のそれぞれを用いる指針は、特定の状況の存在に優先される。

例えば、非常にカファが増大している人がいたとして、その時が夏だったとする。

夏はピッタが優勢な季節なので、1年の中でこの時期に行われる治療法としてはヴィレチャナ(瀉下療法)かラクタモークシャ(瀉血療法)が標準的な治療となる。しかしながらこの症例では悪化したカファは胃にいるので、例え夏だとしても悪化したカファを除去するにはワマナ(吐法)を行う。この人にはワマナ後にカファを鎮静する食事、ライフスタイル、薬草に従ってもらう。その一方で1年のうち暑くピッタが悪化する時期なので、ピッタを悪化させないよう注意が必要である(訳者注; カファは冷性なのでカファを鎮静するには温めるのが一番な訳ですが、暑い時期に温めてしまうと熱性を持つピッタが悪化してしまうので、この場合はピッタとカファに共通している「油性」に反する、「ザラザラゴワゴワ」した「粗い」性質のものを取り入れたり、ピッタとカファを共通で下げてくれる「苦味」ハーブの摂取等を行うのが良い訳です)。

季節と日々のサイクル

どこの場所であっても各々の季節に異なるタイミングがあるので、ある季節から次の季節への移行を示唆する変化を注意深く観察しなければならない(日本国であっても亜熱帯の沖縄と北海道では大違いですし緯度が同じでも太平洋側と日本海側でも違ってきますね)。わたしたちは各々の季節の基本的な性質を場所、時間、日々の様相に当てはめることができる。いつでも外のその日のタイプを評価して、自分の行動に直ちに適用することが出来る。

 季節のパターンを理解すると一日のサイクルをより容易く理解出来る。一日のうちで、全ての四季の時間をわずかに経験出来る。早朝は冬のよう(に寒い)だが、一方で午前中は春の時間である。というのは鳥が囀り、花が開くからである。真昼は、より暑いので夏のようであり、そうすると夕方の日没近くは秋に似ている。このサイクルを夜間も繰り返す。

一日という時間はまた3つのドーシャの周期的な動きという観点から見ることも出来る。早朝と夕方はカファの時間で春のようである。真昼と真夜中はピッタの時間帯で夏のようである。夜明け前と午後の遅い時間から夕方にかけてはワータの時間で秋のようである。わたしたちは一日のサイクルにおいて、ビサルガカーラ(瑞々しく生命力に溢れる半年)とアーダーナカーラ(乾燥し生命力が弱る半年)に相当する期間でさえ見ることが出来る。日の出から正午と日没から真夜中がアーダーナカーラで、正午から日没と真夜中から日の出までがビサルガカーラである。

プラクルティ(体質)における季節の影響

ある人の誕生日は赤ん坊の体質における季節の影響をこの重要な期間に知るのに役立ちます。

しかし一方でわたしたちはこの情報をドーシャの影響を理解するのに用いることが出来ますが、それが必ずしも赤ん坊の基本的な体質を教えてくれる訳ではありません。人の体質は受精の瞬間に決まり、それは誕生時とは異なる季節です。例えば、ある子供が春に生まれたとすると環境にはカファの性質、例えば重い、冷たい、油っこいといった性質が重大な影響を及ぼすかもしれません。その子は例えば風邪や鼻詰まりや咳嗽といったカファの異常に罹りやすいかもしれません。しかしその子が受精したのは夏なので、そのことでピッタ優位な体質をもたらしました。しかし子供の第一となるドーシャを決定するのは季節の要素よりもずっと両親の体質のほうが重要であることを覚えておく必要があります。

・アーユルヴェーダの健康的な春の過ごし方

・アーユルヴェーダで健康に夏を乗り切る!

・アーユルヴェーダの健康的な秋の過ごし方

・アーユルヴェーダの健康的な冬の過ごし方

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