13)ハリドラー(Haridrā)(ターメリック、ウコン)(温辛)

☆ハリドラー全草

☆ハリドラーの花

☆ハリドラーの根茎

【学名】
Curcuma longa Linn.

【科】

ショウガ科(Zingiberaceae)


【同義語・異名】
ガウリー(Gaurī):根茎と花は黄色

ハルディー(Haldī):一般的にハルディーとして知られている

ハッタヴィラーシニー(Haṭṭavilāsinī):ハルディーはその明るい色で市場で目を引く、よくある品である

ハリドラー(haridrā):体色を改善し黄疸に有用である

ハリタ(Harita)

ジャヤンティ(Jayanti)

カーンチャニー(Kāñcanī):その色は黄金色

クルミグニー(Kṛmighnī):全ての寄生虫を殺す

ローマシュムーリカー(Lomaśmūlikā):根茎には毛が生えている

マンガルヤー(Maṅgalyā):全ての神聖な機会に有用である

メーハグニー(Mehaghnī):プラメーハ(糖尿を含む多尿症候群)に有用である

ニシャー(Niśā): 月光のように暗闇を明るくする性質がある

ニシャーキャー(Niśākhyā):満月のように美しい

ピンダー(Piṇḍā):塊状なのでダールハリドラーと区別できる

ピンダバドラー(Piṇḍabhadrā):塊状なのでダールハリドラーと区別できる

ピーター(Pītā):根茎と花は黄色

ピーワリー(Pīvarī)

ランジャニー(Rañjanī):着色料または染料として用いられる

ターメリック(Termeric):英語名

バイシュヤー(Vaiśyā):商業でも人気のある薬である

ワラワールナニー(Varavārṇanī):特に美しい色を与える

ワルナヴィラーシニー(Varṇavilāsinī):女性の間で化粧用として人気がある

ビシャグニー(Viṣaghnī):中毒において有効である

ヨーシトプリヤ(yoṣitpriya):女性の間で化粧用として人気がある

ウコン(鬱金・欝金・宇金・玉金)(和名)

ターメリック(日本語名)



【ガナ/クラ(古典における分類)】
ガナ)
チャラカ: kuṣṭhaghna(難治性皮膚病を治す), lekhanīya(掻爬または減量させるもの), kaṇḍughna(痒み止め), viṣaghna(解毒), tiktaskanda(苦味グループ), śirovirecana(頭部浄化)

スシュルタ:Haridrādi, mustādi, śleṣmasamśamana

ミシュラカ:vallī pancamūla(蔓五根), sugandhāmalaka(十種芳香薬+アーマラキー)


クラ)
Haridrākula


【ラサ(味)】
苦辛

【グナ(性質)】
粗軽

【ヴィールヤ(効力)】

温性

【ヴィパーカ(消化後味)】



【ドーシャへの影響】
カファワータシャーマカ(余剰カファとワータを緩和する)、

ピッタレーチャカ、シャーマカ(余剰ピッタを体外に排出する/余剰ピッタを緩和する


【スロトガーミトワ(経路・臓器・組織行性、親和性。特に作用する部位のこと)】
ドーシャ: カファ、ワータ
体組織(ダートゥ):ラサ、ラクタ、メーダ

老廃物(マラ):便
臓器):子宮、膀胱


【カルマ(作用)】

・ピッタドーシャを緩和する(pittaśāmaka)

・顔色を良くする(varṇya=mukhakāntikara)

・全身の血色を良くする(dehavarṇaprada)

・知覚回復作用(vedanāsthāpana)

・抗炎症/浮腫作用(śothahara)

・味覚を増す(rucivardhaka)

・辛味のように作用する(kaṭupouṣṭika)

・緩下作用(anulomana)

・痔疾を治す(arśoghna)

・アーマ燃焼作用(āmapācana)

・血液浄化作用(raktaprasādaṇa)

・増血作用(raktavardhaka)

・止血作用(raktastambhaka)

・皮膚に良い(tvacya)

・難治性皮膚病を治す(kuṣṭhaghna)

・皮膚の異常を治す(tvagdoṣahara)

・止痒作用(kānḍụghna)

・創傷治癒促進作用(vraṇaropaṇa)

・創傷浄化作用(vraṇaśodhana)

・抗吃逆作用(hikkānigrahaṇa)

・呼吸困難を治す(śvāsahara)

・掻爬/減量作用(Lekhana)

・尿量減少作用(Mūtrasangrahaṇīya)

・尿色改善作用(Mūtravirajanīya)

・子宮浄化作用(出血を増すことによって)(Garbhāśayaśodhana)

・乳汁浄化作用(stanyaśodhana)

・精液浄化作用(śukraśodhana)

・解毒作用(viṣaghna)



【適応(ローガグナタ)】
衰弱(Daurbalya)

浮腫(Śotha)

結膜炎(Netrabhiṣyanda)

歯口腔疾患(Mukhadantaroga)

食欲不振(Aruci)

便秘(Vibandha)

痔疾(Arśa)

痔瘻(Bhagandara)

腹部疾患(Udaravikāra)

腹水(Jalodara)

血液疾患(Raktavikāra)

出血(Raktasrāva)

貧血(Pāṇḍu)

肝脾腫(Yakṛtplīhavṛddhi)

黄疸(Kāmalā)

咳嗽(Kāsa)

呼吸困難(Śvāsa)

気管支喘息(Tamakaśvāsa)

喉の腫れ(Galaśotha)

嗄声(Svarabheda)

皮膚病(tvagvikāra)

体色異常(Varṇavikāra)

全身の皮膚色異常(Dehamukha vaivarṇya)

掻痒症(Kaṇḍu)

湿疹(Pāmā)

体部白癬(Dadru)

丹毒(Visarpa)

寄生虫疾患(Kṛmi)

(糖尿を含む)多尿症候群(Prameha roga)

カファ性の多尿症候群(Kaphaja meha)

肥満(Medoroga)

体臭(Dehadaurgandhya)

外傷(Vṛaṇa)

(猪などの野獣の)牙刺傷(Śukardaṅṣtra)

外傷による痛み(Abhighātaja vedanā)

爪周囲炎(Cippa)

爪甲真菌症(Kunakha)

腫瘍(Arbuda)

リンパ節炎(Apacī)

フィラリア症(Ślīpada)

結石(Aśmari)

尿砂(Mūtraśarkarāvikāra)

乳房痛(Stanapīdā)

乳腺疾患(Stanyavikāra)

精液漏(Śukrameha)

産褥期に起きる疾患(Sūtikāroga)

過多月経(raktāśudhi=raktapradara)

中毒(Viṣa)



【薬用部位】

根茎


【用量・用法】
粉末: 2-5g

搾り汁: 10-20ml


【含有化合物】
curcumin Ⅰ (94%)

Curcumin Ⅱ (5.7%)

Curcumin Ⅲ (0.3%)

Diferuloylmethane

Demethoxycurcumin

Dihydrocurcumin

Bisdemethoxycurcumin

Volatile oils

Terpenoids (eugenol, geraniol, limonene)

Susquiterpenes (αcurcumene, curlone, curcumenol, turmerone, termerol, zingiberin)

Fatty acids (linoleic acid, palmitic acid, oleic acid, stearic acid)

β-sitosterol

Stigmasterol

Gitoxigenin

Sugar

Protein

Minerals

Resins

Essential oil (α-phellandrene, sabinene, cineol, camphene, pinene, limonene, borneol, zingiberene, curcumenone, sesquiterpenes)


【使用例(āmayikaprayoga)】
・鼻炎、下痢、間欠熱、黄疸、肝臓病、尿路疾患、寄生虫、外傷、骨折に対してハリドラーを牛乳で煮てジャッガリー(ヤシ糖)と共に与える

・(糖尿を含む)多尿症候群や黄疸に対してアムラジュースと蜂蜜と共に投与する

・過多月経に対してアムラジュース、蜂蜜、グッグルと共に投与する

・掻痒症、湿疹、灼熱感、蕁麻疹、血液疾患に対してハリドラー粉末を牛の尿と共に与える

・結膜炎に対してハリドラーを20倍量の水で煮て(冷まして)濾したものを点眼する

・めまいに対してハリドラーをペースト状にして額に貼る

・痔に対してアロエヴェラとハリドラーを一緒に撞いてペースト状にしたものを患部に貼る

・フィラリア症に対してヤシ糖と牛の尿と共に投与する

・痛みや水疱のある部位やヒルに噛まれた部位には根茎を貼る

・新鮮な根茎の搾り汁は寄生虫に良い

・鼻詰まりにハリドラーを焼いて出た煙を直接鼻腔から吸い込むと多量の粘液が出て詰まりが取れる

・ハリドラーの根を乾燥させて粉末にしたものは気管支炎に投与する。根茎の搾り汁も気管支炎には良い。

・上記を焼いた煙はヒステリー発作を起こした人に吸わせると良い

・ハリドラー根茎の粉末を焼いた煙を蠍噛傷に2、3分当てると良い

・ハリドラー根茎1に対し20のミョウバンを耳に吹き込むと慢性の耳漏に良い

・ハリドラーの花のペーストは白癬などの皮膚病や淋病の治療に用いられる

・根茎は皮膚疾患には外用とし、疝痛や無月経や鬱血に対しては内服させて用いる

・葉は解熱作用がある

・切り傷や水疱には根茎の粉末を塗布する

・根茎の煎じ液をうがいに用いる

・根茎の粉末は歯口腔疾患に用いる

・捻挫や外傷に対して根茎を貼る

・口渇に対してハリドラーを煮た水に蜂蜜と砂糖を加えて飲ませる

・中毒に対してギーをハリドラーと煮て用いる(A.S.U.40/127)

・尿路結石に対してハリドラーとヤシ糖を等量に混ぜてカーンジー(発酵させて酸っぱい米のお粥)と共に摂ると尿砂の排出に良い

・乾性咳嗽に対してハリドラー粉末をワサの絞り汁で飽和させたものを牛乳の脂肪層と共に飲むと良い


【処方例・主な適応】

ハリドラーカンダ(Haridrā khaṇda)・湿疹、掻痒

ハリドラーディクワータ(Haridrādi kvātha)・カファ性の発熱

ハリドラーチュールナ(Haridrā cūrṇa)・呼吸困難

ハリドラーディレーパ(Haridrādi lepa)・痔疾

ハリドラーディワルティ(Haridrādi varti)・白内障、夜盲症

ハリドラーディヤグルタ(Haridrādya ghṛta)・黄疸、貧血


【注意・禁忌】
大量に用いると(>100mg/kg)動物実験では潰瘍を形成したが人間ではそのような報告はない

【1行まとめ】

皮膚外傷解毒浄化に優れる、食べる抗生物質


【臨床小話】

うちの大学ではパンチャカルマに来た患者さんのガンドゥーシャ(口の中の液体を口に含んだまま動かさず唾液と混ざって口内に一杯に充満するのを待つうがいの手法の一つ)としてトリファラー+ハリドラーの煎じ液に岩塩を混ぜて濾した液体をよく使っています。風邪をひいた時はターメリックの粉末と蜂蜜を混ぜたものをしょっちゅう舐めるようにしています。止血作用があるので台所で包丁で手を切ってしまったときなんかにさっとふりかけても良いですね。

 あとは痒疹に対してターメリックパウダーでガルシャナ(末梢側から中枢側に強めにハーブ粉や少量の油とともに皮膚を擦ること)をしたところ、痒みに対してはかなり即効性がありました。その後皮膚が黄染するのが玉に瑕ですが。

  知人から関節痛にウコンのサプリメントを飲んでいるのですが。と相談があり、以下のような記事を紹介して頂きました。

※ 膝変形性関節症治療にウコンの黄色成分が有望

https://www.carenet.com/news/general/carenet/38924

※ ウコンが膝関節の痛みを和らげる可能性、 豪タスマニア大学メンジーズ医学研究所報告  https://dime.jp/genre/999490/ 

前者はウコン粉末から得られる黄色味の主成分、クルクミンを更に27倍吸収を高めた「セラクルミン」という単一成分に対する話なので、上述の、クルクミン以外の様々な成分からなる「ウコン」粉末とは話が変わってきます。創薬は大抵、薬用植物からの有効主成分の抽出・単離・合成に始まっていますから、こちらもその西洋医学的考えに沿ってのことと思います。

後者もよく読んだらウコン抽出物、とありウコンそのものではありませんでした。

生薬丸ごとと、その主成分抽出物。は別物とわたしは考えています。

丸のまま生薬で含まれる、主成分以外の成分は主成分の吸収を助けたり場合によっては主成分の作用にブレーキをかける、副作用止めの成分が入っている可能性があったり、香りや味で人体を刺激したりといった事が出来ますが、抽出・合成された主成分は主成分でしかなく、もはやそれは西洋医学の薬と同じ考え方で、全員にある程度の用量で作用を呈し、過剰になると副作用を呈する。ということになります。

アーユルヴェーダの古典に書かれたウコンの効能、作用はウコン丸ごとのものであってクルクミンだけに対したものではありません。

まあ、それでもかなりの部分をクルクミンがカバーすると考えた場合、

・ワータとカファを緩和する

・鎮痛作用

・抗炎症・浮腫作用

辺りが変形性膝関節症に効いたのだろうと思われます。

ただ、「膝の痛み」と言っても恐らく二種類あって

・ワータ体質の人ないし膝の使いすぎ(痩せてるタイプ)と

・カファ体質の人でぶよぶよ太って滲出液がたまる膝関節水腫タイプ

がいて、後者はまだマシですが前者にはあまり長期連用はよろしくないのではないかとわたし個人は考えています(オーストラリアの研究のほうはまだ長期予後は分からない、と追求する姿勢を見せていたのでマシですが)。

というのは後者、色白で太って膝に水が溜まるカファタイプ、漢方で言うなら防已黄耆湯が効きそうなタイプでしたらウコンの害は出にくいのではないかと思います。

上記作用で言いますとウコンにはカトゥポーシュティカ、「辛味のように作用する」というものがあり、辛味の作用はと言いますと

・口を綺麗にする

・消化力を強める

・吸収を助ける

・涙が出る

・鼻水が出る

・感覚器を適切に働かせる

・炎症、肥満、じんましん、慢性結膜炎等を治し老廃物の排泄を助ける

・良い風味を与える

・痒みを緩和する

・余剰肉芽新生を止める

・寄生虫を減らす

・望ましくない筋組織の増生を削る

・血液の塊を壊す

・閉塞を破る

・経路を綺麗にする

・皮膚病に良い

・母乳・シュクラ(≒精液)・メーダ(≒脂肪組織)を減らす

があります。

肥満に良くて脂肪組織を減らす作用があるので、色白ブヨブヨ膝関節水腫、カファタイプの人には体重を減らすことで膝関節への負担が減るので、長期に連用しても問題は起きにくいかと思います。

ただ、痩せ型で膝変形が強くて皮膚が荒れて乾燥している、ワータタイプの人ですと長期連用、過量摂取するとこの「脂肪組織を減らす」が祟ってくると言いますか、脂肪組織の中で上質な脂肪組織から骨、骨髄が作られていくので脂肪を減らす→骨を減らす、となり、骨組織が減ると関節の緩み、骨の痛み、粗さ乾燥さが出てきます。

粗い、乾燥、はワータの性質ですから、「同じ性質を与えるとそれを助長し反対の性質を与えるとそれは減弱する」のアーユルヴェーダの基本理念からしますと粗い・乾燥の増加はワータドーシャの増加に繋がり、ワータの悪化は痛みに繋がります。

更に、どちらのタイプにとっても問題なのが「シュクラ(≒精液)を減らす」であり、シュクラから免疫力に近しいとされる、生命維持に必須な「オージャス」という物質が作られます。つまりシュクラが減ると免疫力低下。ということですね。また、シュクラ減少時の症状の一つに全身の痛み、というものがありますのでこれも関節痛には望ましくないのではないかと思います。

というわけでアーユルヴェーダ的に考えると(わたし個人の考えですが)

痩せている人の関節痛→比較的短期(一ヶ月以内)ならウコン製剤も可能

肥満、関節水腫ありのカファタイプの関節痛→やや長期(三ヶ月以内)ならウコン製剤も可能

かと思いますが、上記適応。を見ても本来、骨関節に対する生薬ではないので、わたし個人としてはあまりお薦めはしないかな。という感じです。

日本人はサプリメントやら薬が大好きでそれに頼る人が多い訳ですが、それをするより早寝早起きをするとかきちんとお風呂に入って汗をかくとか尿意便意を我慢しないとか昼寝をしないとか局所ないし出来れば全身のオイルマッサージを定期的にするほうが関節痛には良いのではないかと思います。

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