☆葉と実。葉はハート型なのが特徴。

☆薬用部位である茎の断面。車輪状構造が特徴的。

★花

【学名】
Tinospora cordifolia (Willd) Miers.
【科】
ツヅラフジ科(Menispermaceae)
【同義語・異名】
アムルター(Amṛtā):とても有用で甘露のような性質を持つ
アムルタワルリリー(Amṛtavallirī):健やかな長寿を与える甘露のよう
ビシャクプリヤ(Bhiṣakpriya):この植物は治療において役立つ
チャクラーンギー(Cakrāṅgī)
チャクララクシニカー(Cakralakṣaṇikā):茎の断面は丸い車輪状の構造をしている
チャントラハーサー(Cantrahāsā):種子は半月状
チンノドゥバワ(Chhinnodbhava)
チンナー(Chinnā):茎を切っても繁殖する
チンナルーハー(Chinnarūhā):切ってもまた育つ
デーワニルミター(Devanirmitā):神によって作られた
ディーラ(Dhīra):体力を向上させるもの
グドゥーチー(guḍūcī):障害から守るもの
Heart-leaved moonseed(英名)
ジーヴァンティー(Jīvantī):生命に必須である
ジュワラナーシニー(Jvaranāśinī):発熱における良い薬
カーンドゥブダワー(Kāṇḍobhdavā):茎から生まれた
クンダリー(Kuṇḍalī): (寄生先の)植物をぐるっと回って上っていく
クンダリニー(Kuṇḍalinī): (寄生先の)植物をぐるっと回って上っていく
ランドリカ(Landrika)
マドゥパルニー(Madhuparṇī):葉は蜂蜜のようなジュースを含む
マンダリー(Maṇḍalī):(寄生先の)植物を回るようにして上っていく
ニシャルヤー(Niśalyā):すべての異常を取り除く
ラサーヤニー(Rasāyanī):若返り特性を持つ
ソーマ(Soma): グドゥーチーはソーマのような力を与える
ソーマワルリ(Somavalli):この植物は若返りの特性を持ちヴェーダに書かれたソーマプラントと似ていると言われている
タントリカー(Tantrikā):茎は繊維質でロープのよう
Tinospora(英名)
ワトサーダニー(Vatsādanī):寄生植物である
ワヤスター(Vayasthā):長寿を促進する
ビシャグニー(Viṣaghnī):毒を中和する
ビシャルヤー(Viśalyā):毒素を除去することにより守る
イボツヅラフジ(和名)
【ガナ/クラ(古典における分類)】
ガナ)
チャラカ:sandhānīya(癒合促進), tṛptighna(食欲を亢進させカファを排泄する), tṛṣṇanigrahaṇa(止渇薬),snehopaga(油剤化補助薬), stanyaśodhana(乳汁浄化), dāhapraśamana(灼熱感を治す), prajāsthāpana(安胎薬), vayasthāpana(長寿促進), tiktaskandha(苦味薬グループ), madhuraskandha(甘味薬グループ)
スシュルタ:Guḍūcyādi varga, patolādi varga, āragradhādi varga, kākolyādi varga, śyāmādi varga, tikta varga, vallīpañcamūla
ミシュラカ:vallī pancamūla(蔓五根)、Aṣṭavarga(八種生薬)、pancatikta(五苦)、caturbhadraka(四良薬)、pañcāmṛta yoga(五甘露薬)、Dr. Lad’s 24dravya
クラ)
Guḍūcī kula
【ラサ(味)】
苦渋
【グナ(性質)】
重油
【ヴィールヤ(効力)】
温性
【ヴィパーカ(消化後味)】
甘
【ドーシャへの影響】
トリドーシャシャーマカ(3つのドーシャ全てを緩和する)、ピッタサラカ(余剰ピッタを液状化の働きで上からも下からも排出する)
【スロトガーミトワ(経路・臓器・組織行性、親和性。特に作用する部位のこと)】
ドーシャ: トリドーシャ
体組織(ダートゥ):ラクタ、メーダ、ドラワダートゥ、シュクラ
老廃物(マラ):尿
臓器):肝腎脾
【カルマ(作用)】
・カファドーシャを減ず(kaphaghna)
・若返り作用(rasāyana)
・老化遅延作用(vayahsthāpana)
・体組織を増す(dhātukṛt)
・知覚回復作用(vedanāsthāpana)
・解熱作用(jvaraghna)
・体力向上(balya)
・健康増進作用(pathya)
・目に良い(cakṣuṣya)
・向知性作用(medhya)
・毛髪に良い(keśya)
・育毛作用(keśaropana)
・辛味のように作用する(kaṭupouṣṭika)
・失神を治す(bhramahara)
・精神異常を治す(bhūtaghna)
・心保護・強心作用(hṛdya)
・血液浄化作用(raktaśodhaka)
・増血作用(raktavardhaka)
・胃酸増加作用(āmāśayasthāmlatā)
・止嘔作用(chardinigrahaṇa)
・消化力向上(dīpana)
・アーマ燃焼(pācana)
・アーマ燃焼+食欲増進+吸湿作用(sangrāhi) =grahi
・緩下作用(anulomana)
・利胆作用・余剰ピッタを液性により上か下から排出する(pittasāraka)
・閉塞/抑制作用(nirodhaka)
・止渇作用(tṛṣṇānigrahaṇa)
・灼熱感を治す(dāhapraśamana)
・難治性皮膚病を治す(kuṣṭhaghna)
・抗寄生虫作用(kṛmighna)
・尿量増加作用(mūtrajanana)
・尿色改善作用(mūtravirajanīya)
・催淫作用 (vṛṣya)
・解毒作用(viṣaghna)
【適応(ローガグナタ)】
内服)
加齢に伴う疾患(Jāra vyādhi)
悪魔、幽霊、微生物など目に見えないものが原因の病気(Bhūta)
神経症(Graha bādhā)
疲労(Śrama)
消耗性疾患(Kṣaya)
衰弱(Daurbalya)
体組織減少(Dhātukṣaya)
眩暈(Bhrama)
眼の病気(Netraroga)
白内障(Timira)
毛髪の病気(Keśaroga)
若白髪(Palita)
発熱(Jvara)
慢性熱(Jīrṇajvara)
間欠熱(Viṣamajvara)
灼熱感(Dāha)
口渇(Tṛṣā)
咳嗽(Kāsa)
呼吸困難(Śvāsa)
嘔吐(Chardi)
黄疸(Kamala)
発熱と下痢を伴う黄疸(Halīmaka)
脾臓の病気(Plīhodara)
貧血(Pāṇḍu)
消化力低下(Agnimāndya)
(腹部)疝痛(Śūla)
痔疾(Arśa)
呑酸症(Amlapitta)
赤痢(Pravāhikā)
過敏性腸症候群(Grahaṇī)
痛風(Vātarakta)
関節リウマチ(Āmavāta)
血液疾患(Raktavikāra)
心不全(Hḍrdaurbalya)
難治性皮膚病(Kuṣṭha)
丹毒(Visarpa)
掻痒症(Kāṇḍu)
皮膚病(Carmaroga)
梅毒(Phiraṅga)
寄生虫疾患(Kṛmiroga)
月経過多(Pradara)
排尿困難(Mūtrakṛcchra)
排尿時灼熱感(Mūtradāha)
膿尿(Pūyameha)
多尿症候群(Prameha)
精液減少症(Śukradaurbalya)
中毒(Viṣa)
【薬用部位】
根
茎
【用量・用法】
煎じ液: 50-100ml
ジュース: 10-20ml
粉末: 3-6g
サットヴァ(グドゥーチーの茎を2、3インチ長に切って水の中で潰して澱粉質が沈澱するのを待ち、沈澱したら上澄みを捨てて少量の水で洗って乾かしたものを言う。大抵他の薬と混ぜて使われる、グドゥーチー独特の剤形。): 10-50g
【含有化合物】
sesquiterpene tinocordifolin alkaloids ( berberine, choline, magnoflorine, palmatine, tembetarine, magnoflorine, tinosporin, tetrahydropalmatine, isocolumbin)
Glycosides ( furanoid diterpene glucoside, tinocordiside, tinocordifolioside, cordioside, cordifoliosideA,B, syringin, syringin-apiosylglycoside, palmatosides C,F, cordifoliside A,B,C,D,E)
Lactones (clerodane derivatives, tinosporon, tinosporides, jateorine, columbin)
Steroids (sitosterols, hydroxy ecdysone, ecdysterone, makisterone, giloinsterol )
Jatrorrhizine
Tinosporidine
Cordifol
Cordifelone
Giloin
Giloinin
Tinosporic acid
【使用例(āmayikaprayoga)】
・ワータ性発熱にグドゥーチーの煎じ液を与える
・黄疸と間欠熱(マラリアのような周期性の発熱)には搾り汁を与える
・若返りに有用である
・難治性皮膚病、梅毒、痛風、関節リウマチ、衰弱、多尿症候群(糖尿病を含む)、痔疾、乳腺の病気、精液漏、その他ワータ性の病気によく用いられる
・淋病に対しグドゥーチーの搾り汁を長胡椒と蜂蜜と混ぜたものを1日2〜4回投与する
・グドゥーチーサットヴァは間欠熱、慢性下痢、慢性に経過した赤痢、灼熱感、梅毒、慢性に経過した淋病、白色帯下、黄疸、関節リウマチ、尿路疾患などに非常に有用である
・グドゥーチーの茎から作られた薬用ごま油は外用としてらい病や他の皮膚病、ことに痛風に有用である
・グドゥーチー茶匙半分に茶匙1/4のシラージットを混ぜると血糖の安定化に良い
・慢性熱に対して茶匙半分のグドゥーチーを茶匙半分のマハースダルシャンとひとつまみの長胡椒と混ぜたものを1日3回投与する
・グドゥーチーのギーは血液浄化力が強いのでことにピッタ性の痛風関節炎にスプーン1杯を1日2回飲むと良い
・肝機能障害に対して茶匙半分のグドゥーチーに茶匙1/4のクタキとチトラカを混ぜたものを1日3回投与する
・貧血には茶匙1杯のグドゥーチーを茶匙2杯のアロエヴェラゲルを混ぜたものを投与する
・パクワーシャヤ(大腸)でワータがピッタを押し込んでいることによる潰瘍性大腸炎やピッタ性の関節炎や坐骨神経痛に対してグドゥーチーとダシャムーラの二ルーハ(煎じ液)浣腸かグドゥーチーを牛乳で煮た煎じ液(グドゥーチークシーラパーカ)を用いた浣腸が良い
・グドゥーチーサットヴァは食道炎、胃炎、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、他類似のピッタ性疾患に良い
【処方例・主な適応】
グドゥーチャーディチュールナ(Guḍūcyādi cūrṇa)・肝臓病、貧血
グドゥーチャーディクワータ(Guḍūcyādi kwātha)・ワータ性発熱
グドゥーチャーディローハ(Guḍūcī loha)・痛風、関節リウマチ、ウイルス性感染症後に残る発熱
アムルターリシュタ(Amṛtāriṣṭa)・発熱全般
グドゥーチータイラム(Guḍūcī tailam)・痛風、白内障
グドゥーチーグルタ(Guḍūcī ghṛta)・痛風、難治性皮膚病
グドゥーチーサットヴァ(Guḍūcī satva)・多尿症候群(糖尿病を含む)
【注意・禁忌】
ひどい低血糖には禁忌。
大量に用いるとビタミンBを吸収して嘔気を引き起こす
【1行まとめ】
トリドーシャを緩和する(けどピッタに最も作用する)、若返り作用も嬉しい緩和薬の王様
【臨床小話】
若返り作用、解毒作用、血液浄化作用、心保護作用があるのでCOVID-19後の諸症状や毒チン後遺症にも良い可能性があると思います。発熱はアーユルヴェーダでは身体だけでなく心のドーシャの関与もあるとされていますが、このグドゥーチーは精神異常を治する作用もあるので、発熱に特に有効なハーブの一つであると言えます。
グドゥーチーは蔓性植物なので巻き付く寄生先が必要なのですけれども、寄生先の樹の性質も取り込むと言われています。つまり、ニームの樹に巻き付いていたグドゥーチーはより苦味が強化されている、ということになり、ピッタやカファ性疾患により有効です。