78)シリーシャ(Ṡirīṣa)(微温辛)(ビルマネム)

☆シリーシャ樹木全体

☆シリーシャ樹皮

☆シリーシャの花、葉、豆果

☆シリーシャの種子

【学名】
Albizia lebbeck (Linn). Benth

【科】

Fabaceae(マメ科)

【亜種】

白、黒、赤と3種類のシリーシャがあるとされる。

Śveta (白)śirīṣa: Albizia procera Benth(タイワンネム)、Albizia lucida Benth(lucidaは白シリーシャの一種とされるが稀)

Kṛṣṇa (黒)śirīṣa: Albizia odoratissima Benth(稀)が該当

Rakta(赤)śirīṣa: Albizia amara Boir.


【同義語・異名】

East india walnut(英名)

ウッダナク(Uddanak)

ヴィプラ(Vipra)

Woman’s tongue tree(英名)

カピータナ(Kapītana):広く生育する

Siris tree(英名)

シャマル(Shyamal)

シュカタル(Śukataru):葉はオウムの色に似ている

シュカーバプシュパ(Śukābhapuṣpa):花々はオウムに好かれる

シュカプシュパ(Śukapuṣpa):花々はオウムに好かれる

シュカプリヤー(Śukapriyā):オウムに好かれる

シリーシャ(Śirīṣa):見た目の美しい木

スプシュパカ(Supuṣpaka):花々は美しい

バンディラ(Bhaṇḍila):幸せをもたらすもの/神聖な薬

ビシャーパハ(Viṣāpaha):毒を除去するもの

ビシャハンタ(Viṣahanta):毒に対する解毒剤

ビルマネム(和名)

プラワワンガク(Plavavangak)

ブルンタプシュパー(Vṛntapuṣpā):丸い花々

ムルドゥプシュパ(Mṛdupuṣpa):花々は柔らかく繊細である

Lebbeeck tree(英名)

ローマシャプシュパカ(Lomaśapuṣpaka):花々は軟毛で覆われている

【ガナ/クラ(古典における分類)】
ガナ)

チャラカ:viṣaghna(解毒作用), vedanāsthāpana(知覚回復)、śirovirecana(頭部浄化), kaṣāyaskanda(渋味グループ

スシュルタ:sālasārādi

クラ)
Śimbikula


【ラサ(味)】

本によって結構味の違う生薬でした。5種類の本を調べると、

渋5苦5甘4辛2

と言う結果だったので、「渋苦」はまあ決定で良いと思います。

「甘」も8割の支持があるのでまあ決定。「辛味」は4割でしかないので却下で、

「渋苦甘」としたいと思います。


【グナ(性質)】
軽粗鋭


【ヴィールヤ(効力)】

これも本によって(参考にしたニガントゥによって)意見が異なる結果となりました。

微温( Iṣad uṣṇa)2

非温(平)(Anuṣṇa)2

冷1

ギャネンドラ・パンディ先生は薬学本の著者ズの中で唯一直接教えられた先生なので先生の顔を立てて、微温を自分としては採用します。


【ヴィパーカ(消化後味)】

【プラバーワ(特異作用)】

Viṣaghna(解毒作用)


【ドーシャへの影響】
トリドーシャハラ(三つのドーシャを排除する)


【スロトガーミトワ(経路・臓器・組織行性、親和性。特に作用する部位のこと)】
ドーシャ: トリドーシャ
体組織(ダートゥ): ラサ、ラクタ

老廃物(マラ):

内臓: 呼吸器


【カルマ(作用)】

・カファドーシャを減じる(Kaphaghna)

・頭部浄化作用(Śirovirecana)

・目に良い(Cakṣuṣya)

・知覚回復作用(Vedanāsthāpana)

・顔色を良くする(Varṇya)

・催吐作用(Vāmaka)(大量で)

・収斂作用(Stambhana)

・呼吸困難を治す(Śwāsahara)

・鎮咳作用(Kāsaghna)

・血液浄化作用(Raktaśodhaka)

・皮膚病を治す(Twakdoṣanāśaka)

・難治性皮膚病を治す(Kuṣṭhaghna)

・丹毒を治す(Visarpahara)

・止痒作用(Kaṇḍughna)

・抗浮腫・抗炎症作用(Śothahara)

・催淫作用(Vṛṣya)

・解毒作用(Viṣaghna)

【適応(アーマイカプラヨーガ)】

頭痛(śiroroga)

片頭痛(Ardhāvabhedaka)

スーリヤーワルタ(Sūryāvarta・これは適切な和訳や病名が思い浮かばなかったのですが、太陽が昇るにつれ眉間の辺りがひどく痛む(正午に最強になる)、という病気です)

(マラリアなどの)間欠熱(Viṣamajvara)

気管支喘息(śvasa)

咳嗽(Kāsa)

吃逆(Hikkā)

感冒、鼻炎(Pratiṣyāya)

毒虫刺傷(Kīṭa danśa)

中毒(Viṣa)

毒蛇咬傷(sarpa viṣa)

鼠毒(mūṣika viṣa)

掻痒(Kāṇḍu)

浮腫(śotha)

寄生虫疾患(Kṛmi)

疥癬Vicharchika, kaisen

丹毒Visarpa, tandoku

白斑症(świtra)

難治性皮膚疾患(Kuṣṭha)

癤(piḍaka)

水疱性皮膚疾患(visphoṭa)

瘰癧(Gaṇḍamālā、頸部のリンパ節がいくつも腫れて連なり花輪を首にかけたように見える様。ここでは結核性頸部リンパ節炎と解釈しました)

肥満症(medoroga)

潰瘍(Vraṇa)

歯痛(Dantaśūla)

歯と歯肉を強くする

夜盲症、梅毒、咳嗽など呼吸器疾患(ことに葉)

避妊(根は殺精子作用を持つ)

インポテンツ(klaibya,一方で花は催淫作用を持つ)

難産(mudhagarbha)

麻疹/天然痘(masūrikā)

【薬用部位】
樹皮、葉、花、種子

【用量・用法】
樹皮の粉末:3-6g

種子の粉末:1-2g

花及び葉の搾り汁:10-20ml

煎じ液:30-50ml


【含有化合物】
タンニン

d-catechin

d-leucocyanidin

albigenin

albegenic acid

saponins

glycosides

melanoxetin

okanin

phytosterols

triterpenes

albizziagenin

lebbekanin

【使用例(āmayikaprayoga)】
外用)

・水疱性皮膚疾患(visphoṭa)に対しシリーシャ、ウドゥンバラ、ジャンブーを患部に振りかけたりペーストにして当てると良い

・カファ性丹毒(kaphaja visarpa)はシリーシャの花を少量のギーと混ぜて当てると良い

・目の病気(急性結膜炎)に対しシリーシャの搾り汁に蜂蜜を混ぜたものをアイラインのようにして用いると良い。

・スーリヤーワルタや偏頭痛のような頭痛において、シリーシャとムラカの種子の搾り汁を点鼻薬として用いると良い。

・シリーシャの花のペーストにターメリック、ダールハリドラーとギーを混ぜたものを点鼻すると四日熱マラリアに良い。

内服)

・しゃっくりと咳嗽にはシリーシャの花の搾り汁かサプタパトラを長胡椒と蜂蜜と共に飲むと良い。ことにカファ性、ピッタ性のしゃっくり・咳嗽に良い。

・シリーシャ、カダリ、クンダの花を長胡椒と一緒に米の研ぎ汁で飲むと全てのタイプの喘息に良い。

・シリーシャの樹皮、カルパサの花、アーラグワダとカーカマチの葉のペーストを別々に貼ると難治性皮膚病に良い。

・シリーシャとキニヒの搾り汁を混ぜて蜂蜜と共に飲むと寄生虫に良い。

・シリーシャ、ランマジャカ、ナーガケーシャラ、ロードラの粉末で体を擦ると皮膚の不純物を取り除き、多すぎる発汗も取り除くことで肥満に良い。

・難産:胎児に異常が見られる場合の術後措置として、シリーシャおよびアルジュナで処理した水(ヒー魔ってことでしょうか?)を摂取させるべきである。

・中毒に対しシリーシャとシンドゥワラのペーストを塗ると良い。

・パンチャシリーシャアガダ(シリーシャの花、葉、根、種子、樹皮の5部位全てを使った薬)は中毒に良い。

・毒蛇咬傷に対し白胡椒をシリーシャの花の搾り汁に1週間漬けたものは点鼻薬としても内服してもアイラインとして使っても良い。

・鼠毒に対し、シリーシャのペーストとイングディを蜂蜜と一緒に内服すると良い。シリーシャの心材、実、樹皮を蜂蜜と一緒に飲むのも良い。シリーシャの種子と心材と種子を頭部を浄化するために点鼻するのも良い。

・毒虫に刺された場合、シリーシャの煎じ液に三辛、塩、蜂蜜を混ぜたものを飲めば毒虫の中毒に効く。

・カファ性の毒虫咬傷による中毒の場合、シリーシャ単独またはアンコーラの根と混ぜたものを米の研ぎ汁と一緒に飲むと嘔吐を催す。

・シリーシャの種子と長胡椒の粉末をアルカの乳液に3回浸したものは昆虫毒を破壊する。

・瘰癧にはシリーシャの種子のペーストを頸部に塗り、また内服すると良い。

【処方例・主な適応】

ダシャーンガレーパ(Daśānga lepa)・水疱瘡、ヘルペス感染症、湿疹、頭痛、発熱

シリーシャーリシュタ(Śirīṣāriṣṭa)・気管支喘息、咳嗽、吃逆、皮膚のアレルギー性疾患

ワジュラカタイラ(Vajraka taila)・痔瘻、肥満

【注意・禁忌】
臨床現場でも基礎実験でも毒性や禁忌は報告されていない。

【1行まとめ】

古典再現が難しい解毒王


【臨床小話】

チャラカ・サンヒター総論編25章40条にある「アンタが一番!」シリーズで、このシリーシャは映えある「中毒に一番良い」つまり解毒の王様ハーブである。と書かれています。

なので使ってみたくて仕方ありませんでした。パンチャシリーシャアガダ、シリーシャの5つの部位を贅沢に使った解毒剤なんてあらゆる毒に効く、とか書いてあるので是非飲んでみたいじゃないですか。

でもシリーシャ製剤ってあまり売ってないんです!!!!

現地、例えばケーララ州在住でもない限り、花とか根をゲットするのって大変ですよね。

古典や教科書にも色々な処方名が書かれているんですが、大手製薬会社が手掛けていて通販とかで入手可能なのがたったの上述3種類の処方しかないんです。がっかりです。特に2021年以後、mRNAワクチン絡みで色々解毒したかったのに、手に入らないという。

シリーシャと言えば、2009年にケーララ州に鞭打ち症の治療でカラリマッサージを受けたあと、入浴の前に渡されたのがこのシリーシャの粉末(現地、マラヤラム語ではシリーシャはbaka、バカと言うので覚えていました)でした。「バカパウダー」の小袋を渡されて、その粉末でまずオイルまみれの体を擦ってから、温シャワーで体を流してね。と言われていました。アーユルヴェーダですとブラックグラム、ケツルアヅキとか、ひよこ豆の粉末で体を擦ってから温シャワーを浴びるのが推奨されてますけど(石鹸だと完全にオイルを取り除いてしまうので、ワータ他ドーシャを鎮めるにはある程度の油分が皮膚に残る方が治療上望ましいとされている)、カラリマッサージ後のオイルまみれの体を洗うのに、そのブラックグラムとかひよこ豆の代わりにシリーシャを使っていた感じです。すごく良い香りでした。だから治療が終わる時に、ひよこ豆の代わりに。と何袋かお土産に買って帰った思い出があります。

臓器指向性が呼吸器で、呼吸器疾患にも適応があって「解毒作用」がプラヴァーワですから、塵肺なんかにも応用できそうですよね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次