☆バラーの花と葉

☆バラーの実

☆バラーの三角形をした種子

☆バラーの乾燥・細断根

【学名】
Sida cordifolia Linn.
【科】
アオイ科(Malvaceae)
【亜種】
BhāvaprakāśaとKaiyadeva Nighantuは1−4、Dhanvantari Nighantuはa-eの亜種がバラーにはあると書いている。
- Balā—Sida cordifolia a. Balā—Sida cordifolia
- Atibalā—Abutilon indicum b. Atibalā—Abutilon indicum
- Nāgabalā—Sida veronicaefolia/Grewia hirsuta c. Nāgabalā—Grewia hirsuta
- Mahābalā—Sida rhombifolia d. Mahābalā—Sida rhombifolia
e. Rājabala—Sida veronicaefolia
【同義語・異名】
Balāḍhyā(バラードゥヤー):頑強さと力を与える
Balāḍūyā(バラードゥーヤー):頑強さと力を与えるもの
Barela(バレーラ)
Bariyārā(バリヤーラー)
Baryāl(バルヤール)
Bhadra(バドラ)
Bhadraudanī(バドラウダニー):種子は穀類のよう
Country mallow(英名)
Kharaiṭī(カライティー)
Kharayaṣṭikā(カラヤシュティカー):毛の生えたザラザラな茎を持つ
Khireṅṭī(キレンティー)
Mahasamanga(マハサマンガ)
Odanāhvayā(オーダナーフワヤー):種子は穀類のよう
Pītapuṣpī(ピータプシュピー):花々は黄色
Samanga(サマンガ)
Sanasa(サナサ)
Śītapākī(シータパーキー):実は冬に実る
Vāṭyā(ワーティヤー):強い繊維を持つ
Vatyalaka(ワティヤラカ):この植物は野に育つ
Vāṭyālikā(ワートゥヤーリカー):野生に育つ
Vinayā(ヴィナヤー):この植物は体力促進に使われる
Vīryabala(ヴィールヤバラ)
【ガナ/クラ(古典における分類)】
ガナ)
チャラカ: )Bṛmhaṇīya(体重と体力を増す薬グループ)、balya(体力向上薬グループ)、 prajāsthāpana(受胎促進・抗催奇形性・安胎薬グループ)
スシュルタ:Vātasamśamana(ワータドーシャ緩和薬グループ)
ミシュラカ:Madhyama pancamūla(中五根、若返り作用、増精作用、抗加齢作用を持つ五種類の中位の大きさの植物の根の集まり)、Aṣṭavarga(八種生薬)、Dr. Lad’s 24dravya
クラ)
kārpāsakula
【ラサ(味)】
甘
【グナ(性質)】
重油粘
【ヴィールヤ(効力)】
冷性
【ヴィパーカ(消化後味)】
甘
【ドーシャへの影響】
ワータピッタシャーマカ
【スロトガーミトワ(経路・臓器・組織行性、親和性。特に作用する部位のこと)】
ドーシャ: ワータとピッタを緩和する
体組織(ダートゥ):ラサ、ラクタ、マーンサ、メーダ、シュクラ、オージャス
老廃物(マラ):便
【カルマ(作用)】
・悪化ワータ除去作用(Vātahara)
・オージャス増加(Ojovardhaka)(免疫力亢進)
・若返り作用(Rasāyana)
・体力向上(Balya)
・筋量増加(Bṛṅhaṇa)
・美肌作用(Kāntivardhaka)
・向知性作用(Nāḍībalya)
・解熱作用(Jvaraghna)
・(マラリアなどの)間欠熱を治す(Viṣamajvarahara)
・アーマ燃焼+消化力亢進+吸湿作用(Grāhī)
・緩下作用(Anulomana)
・心保護・強心作用(Hṛdya)
・出血性疾患を治す(Raktapittaśāmaka)
・抗寄生虫作用(Kṛmighna)
・利尿作用(Mūtrala)
・精子形成作用(Śukrala)
・受胎促進・抗催奇形性・安胎作用(Prajāsthāpana)
・油性化作用(Snehana)
【適応(ローガグナタ)】
(進行した結核などによる)消耗性疾患(kṣayā)
悪液質/羸痩(Kṛśatā)
衰弱(Daurbalya)
体組織減少(Dhātukṣaya)
艶の無い肌(Kāntikṣaya)
片麻痺(Pakṣāghāta)
顔面神経麻痺(Ardita)
ワータ性疾患(Vātavyādhi)
目の病気(Netraroga)(外用)
発熱(Jvara)
(マラリアなどの)間欠熱(Viṣamajvara)
肺結核/血胸(Uraḥkṣata)
結核(Rājayakṣmā)
咳嗽(Kāsa)
嗄声(Svarabheda)
過敏性腸症候群(Grahaṇī)
腹部膨満(Ādhmāna)
便秘(Vibandha)
心不全(Hṛddarubalya)
出血性疾患(Raktapitta)
痛風(Vātarakta)
多尿症候群(Prameha)
排尿困難(Mūtrakṛccha)
尿の異常(Mūtravikāra)
精子尿症(Śukrameha)
子宮機能低下(Garbhāśayadaurbalya)
過多月経(Pradara)
炎症を伴う外傷(Vraṇaśotha)(外用)
【薬用部位】
主に根
種子(Bījabandaとして知られている)
葉
【用量・用法】
根の粉末; 6g
全草の粉末; 6g
煎じ液; 50-100ml
搾り汁; 10-20ml
【含有化合物】
ephedrine
Pseudoephedrine
Quinazolines (vasicine, vasicinol)
Cryptoleptins
Phytosterols (stearic and hexacosanoic acids, sterculic, malvalic, fumaric acid)
Flavonoids
Saponins
Aspargine
N-methyl tryptophan
【使用例(āmayikaprayoga)】
・結核や消耗性疾患に対してバラーの根を煮て作ったギーを牛乳と共に与える
・消耗に対してバラーの根を10回牛乳と一緒に撞いて毎日蜂蜜と摂ると良い
・結核に対して根の煎じ液を蜂蜜とギーと一緒に投与すると肺組織の修復と空洞形成に良い
・尿路の傷や潰瘍による排尿困難に対してバラーの根を牛乳で煮て毎日飲むと良い
・心臓を強くするためにバラーの根とマカラドワージャ(makaradhvaj)とカストゥーリを与えると良い
・腕の萎縮に対してバラーの根の煎じ液と岩塩を与えると良い
・過多月経に対してバラーの根の粉末を蜂蜜と混ぜて牛乳と一緒に飲むと良い
・出血性痔に対して米はぜとバラーとプリシュニパルニーと煮て作ったお粥を摂ると良い
・出血性疾患に対してバラーの根を牛乳で煮て与える
・下痢に対して牛乳でバラーと乾姜を煮たものを朝に飲んでからヤシ糖とごま油を飲むと良い
・痛風に対してサハスラパーカまたはシャタパーカバラーオイルを浣腸、オイル浴、食用に用いると良い
・寒気を伴う発熱や咳嗽、鼻詰まり、気管支炎、気管支喘息に対してバラーの根の煎じ液と生姜を与えると良い
・カファ性アルコール中毒患者の口渇に対してhrīberaとバラーとカンタカーリもしくはプリシュニパルニーの煎じ液を与える
・バラーを煮た牛乳を眠前、性行為後に飲むと生殖器官の再生に役立つ
・白帯下、頻尿、淋病に対してバラーの根皮の粉末を牛乳と砂糖と一緒に毎日与えると良い
・慢性かつ重度のフィラリア症に対してバラーとアティバラーの二種類を煮て作った牛乳を与えると良い
・感染を伴う創傷に対して創を洗浄するのにバラーの根の煎じ液を用いると良い
・外傷に対して葉のペーストで覆うと良い
・目の病気に対して葉のペーストを貼ると良い
・片麻痺、顔面神経麻痺、頚椎症、五十肩、坐骨神経痛、神経痛、頭痛や他のワータ性疾患に対してバラーの根皮と牛乳で作られたオイルを1日2回塗ると良い。片麻痺に対してバスティ(オイル浣腸)を行っても良い。
・筋肉の萎縮、筋力低下に対してチャンダンバラーラクシャーディタイラを定期的に塗ると筋力と筋緊張の回復に良い
・性行為感染症や梅毒による潰瘍に対してバラーの根皮で出来たペーストを塗ると良い。
・皮膚を柔らかく滑らかにするのにバラーと牛乳を塗ると良い
【処方例・主な適応】
バラータイラ(Balā taila)・ワータ性疾患、骨折
クシーラバラータイラ(Kṣīrabalā taila)・ワータ性疾患
バラーグドゥチャーディタイラ(Balāguḍucyādi taila)・痛風、出血性疾患
バラーリシュタ(Balāriṣṭa)・ワータ性疾患、羸痩
マハーバラーディタイラ(Māṣabalādi taila)・ワータ性疾患、肩こり
バラーディカシャーヤ(Balādi kaṣāya)・ピッタ性咳嗽
バラーディグルタ(Balādya ghṛta)・結核、咳嗽
バラーシュワガンダラークシャーディタイラ(Balāśvagandhalākṣādi taila)・発熱、精神異常、ワータ性疾患
バラーシュワガンダーディタイラ(Balāśvagandhādi taila)・ワータ性疾患、消耗、くる病
チャンダンバラーラクシャーディタイラ(Candanbalālakṣādi taila)・頭痛、胸痛、慢性熱、灼熱感
【注意・禁忌】
肥満には禁忌
バラーにはエフェドリン様のアルカロイドが含まれているためFDAが認可せず、米国での使用は禁じられている。
【1行まとめ】
乾かしつつオージャスを増し若返らせ体力をつける、強精ワータピッタ緩和薬
【臨床小話】
ラッド先生の本にはトリドーシャシャーマカだが過量だとカファを悪化させる。とありましたが、インドのドラビヤグナ本は大抵ワータピッタシャーマカと書かれていました。
カルマに「グラーヒ」があるので基本的には燥性なんですよね。その割にグナが重性油性粘性とカファと同じ性質なので過量だったり長期だったりするとカファを悪化させるよ。ということなのでしょう。まあワータの性質、軽い&乾燥&ザラザラ。とは真逆ですからワータの異常はとても良く緩和してくれますし、甘冷甘なのでピッタを緩和するのはもちろんのことです。
チャラカ・サンヒター総論編25章40の「アンタが1番!」シリーズではバラーは64番目に登場し、「グラーヒカルマがあり、体力を増しワータを緩和する」のが1番な薬草であると言われています。「体力を増す」「若返り」「筋量を増す」というのが結構ポイントですね。お年寄りにも消耗した人にも神経筋疾患の人にも安心して使えるので、ワータ性疾患(片麻痺など)や関節痛の薬用オイルの処方には大抵配合されています。
同じく筋量を増す牛乳やアシュワガンダーとの組み合わせも、相乗効果を狙ってか多いですね。
軟部組織の悪性腫瘍と診断されて、サダナンダ先生の診察後、うちの大学のチャンダンバラーラクシャーディタイラ(CBLオイル)による局所マッサージを勧められた患者さんがいて、1年間以上真面目にせっせとオイルマッサージを続けたら腫瘍が消えたという話を直接その患者さんから聞いたことがあります。
FDAも今回の毒チン騒ぎで腐った機関なのが露呈しましたけれど、バラーを禁止したのってそれだけ良く効く生薬で、ロックフェラー石油医学の覇道の邪魔になるからなんじゃ。と皮肉抜きにそう思います。