48)ヤワ(Yava)(冷辛)(大麦)

☆大麦全体

☆完熟実

☆大麦粉(大麦を脱穀して炒ってから粉に挽いたものでサンスクリット語ではyava saktu、ヤワサクトゥでヒンズー語ではjau sattu,ジャウサットゥと言います。)

【学名】
Hordeum vulgare

【科】

イネ科(Gramineae)

【同義語・異名】

Akṣata(アクシャタ)

Barley(英名)

Divya(ディブヤ)

Hayaṣta(ハヤシュタ)

Kancuki(カンチュキ)

Medhya(メッディヤ)

Pavitradhānya(パビトラダーンニャ)

Rājadhānya(ラージャダーンニャ)

Śaktu(シャクトゥ)

Sitaśūka(シタシューカ)

Taukya(タウキャ)

Tīkṣṇaśūka(ティクシュナシューカ)

Turaṇāpriya(トゥラナープリヤ)

Yava(ヤワ)

(六条)大麦(和名)


【ラサ(味)】
渋甘

【グナ(性質)】
粗性、重性、流動性、粘性、柔性

【ヴィールヤ(効力)】



【ヴィパーカ(消化後味)】

【ドーシャへの影響】
カファピッタハラ、ワータクルタ(カファとピッタを減じ、ワータを増加させる)



【カルマ(作用)】

向知性作用(Medhya=Medha vardhana)

体力向上(Balya)

声と喉に良い(Kaṇṭhya)

顔色を良くする(Vraṇya)

膨張性緩下作用(Vidkṛta)

アーマ燃焼+消化力亢進+吸湿作用(Grāhi)

食欲向上(Agnivardhana)

止嘔作用(Chardinigrahaṇa)

鎮咳作用(Kāsahara)

安定性を増す(Sthairyakṛta)

掻爬・減量作用(Lekhana)

脂肪組織除去作用(Medohara)

抗利尿作用(Baddhamūtra)

スロータスを塞がない(Anabiṣyandi)

催淫作用(Vṛṣya)

【適応(ローガグナタ)】
副鼻腔炎(Pīnasa)

鼻炎(Pratiśyāya)

顔色の異常(Varṇavikāra)

喉の病気(Kaṇṭhavikāra)

咳嗽(Kāsa)

呼吸困難(Śvāsa)

脾臓の病気(Plīhāroga)

血液疾患(Raktavikāra)

難治性皮膚病(Kuṣṭha)

脂肪の病気(Medoroga)

肥満(Sthaulya)

口渇(Tṛṣṇa)

多尿症候群(prameha)

ウルスタンバ(Urustambha・大腿の筋攣縮を主症状とする急性横断性脊髄炎、アテローム性動脈硬化症、大動脈腸骨動脈閉塞、痙性対麻痺、ミオパシーなどを包括する疾患。パンチャカルマが禁忌とされている)

外傷(Vraṇa)

過労による消耗(Kṣatakṣīṇa)

【薬用部位】

全草


【用量・用法】
煎じ液: 50-100ml

【含有化合物】
p-coumaroylagmatine

Hordenine

Pyrrolidine

Luteolin glycoside

Flavones glycosides-orientoside, orientin

Cynoglycosides-3-β-D-glucopyranosyloxy-2-methylpropene

4-β-D-glucopyranosyloxy-3-hydroxyl-3-hydroxymethyl-butyrobitrile

【使用例(āmayikaprayoga)】
内服)

・ヤワとクタジャの樹皮と黒胡椒の煎じ液を作って茶匙2杯ずつ1日2回7日間投与するとマラリアに良い

・乾燥したヤワの実(大麦)の煎じ液は糖尿病、下痢、呼吸器感染症、尿路感染症の治療に用いられる

・ヤワの実を漬け込んだ水は乳汁分泌不全に良い。これは赤痢、下痢、腹部疝痛に用いて良い。

・乾燥させたヤワ全草の温浸出液(お湯に刻んだヤワ全草を漬け込んで出来る)は脚気、咳嗽、インフルエンザ、麻疹、梅毒、腎炎、黄疸、赤痢、鉤虫感染症に良い

・乾燥ヤワ全草の温浸出液は小児の口腔カンジダ症に良い

・ヤワの種子を炒ってから粉に引いたもの(ヤワサクトゥ)をお粥にして食べさせると不消化に良い。空腹をコントロールするのにも良いので肥満の治療にも用いられる。

外用)

・乾燥したヤワの実の煎じ液は痔核に塗ったり感染を伴った外傷の湿潤を保つために塗布すると良い

・ヤワの花を内服し、実を膣に入れると避妊作用がある

・副鼻腔炎に対して乾燥したヤワの実の煎じ液を鼻に塗ると良い

・ヤワの実の粉を内服し、また、レモン汁もしくは酸味のバターミルクと混ぜて練る。これを少し温めてから筋肉や関節の痛む場所に塗ると3、4日で痛みは取れる。

【処方例・主な適応】

ヤワクシャーラ(Yavakṣāra)・尿路結石、腹痛、腹水、中毒

アガスティヤラサーヤナ(Agastya rasāyana)・喘息、心臓病、痔疾

コーラクラタディチュールナ(Kolakulathadi cūrṇa)・肥満症(ウドワルタナという強めのマッサージで脂肪を減らす為に用いられる)、麻痺、関節リウマチ

アグニトゥンディワティー(Agnitundi vaṭī)・急性、慢性膵炎、夜尿症

【1行まとめ】

頭も良くなる糖尿と減量の友な穀物


【臨床小話】

正直、薬としては使ったことがないのですが(ヤワクシャーラは有名なものの)、多尿症候群(プラメーハ、糖尿病も含まれる)における「体に良い食事」としてヤワこと大麦を使ったものが力説されています。日本の刑務所では麦飯(3割麦、7割白米)が供されているそうですが、受刑者の糖尿病が改善していったので何でだろう?麦飯のおかげかな???と不思議がられているペーパーがあるそうですが、アーユルヴェーダでは数千年前から糖尿に良いことは分かっていたんですね。

 食事としてのほうが有名なせいかほとんどの薬学の教科書に載ってなくて、パンディ教授の本にしか書いてなくて、この項はこちらのサイトと↓

https://www.easyayurveda.com/2019/10/12/barley-hordeum-vulgare

こちらの論文のお世話になりました。

https://www.jdrasccras.com/temp/JDrugResAyurvedicSci63150-4777156_131611.pdf

https://www.jdrasccras.com/temp/JDrugResAyurvedicSci63150-4627267_125112.pdf

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