10)ジャターマーンシー(Jaṭāmāṃsī)(冷辛)

☆全草

☆花のアップ


☆薬用部位である根

【学名】
Nordostachys Jatamansi

【同義語・異名】
Bhūtajaṭā(ブータジャター):小根は悪魔の髪の毛のように見える
Bhūtakeśī/śikhā(ブータケシー/シカー):悪魔の髪の毛に似ている
Cakravartinī(チャクラワルティニー):民衆の面倒を見る女王のように病気の世話をする
Gandhamāmsī(ガンダマーンシー):強い芳香を持っている
Himsrā(ヒンスラー):小根は身なりを整えていない黙想家か賢者の髪に似ている
jaṭāmāmsī(ジャターマーンシー):新鮮な根茎は髪の毛のような小根をまとっている
Jaṭilā(ジャティラー):髪の毛のような小根は曲がりくねっている
Keśitī(ケーシティー):小根は髪の毛に似ている
Kravyādī(クラヴャーディー):カラスのように黒い
Kṛṣṇajaṭā(クルシュナジャター):ジャターマーンシーの種類の一つ
Kirātinī(キラーティニー):ヒマラヤの山々に育つ
Māmsī(マーンシー):茎は肥厚している
Mātā/Jananī(マーター/ジャナニー):母親が子供の面倒を見るように病気の世話をする
Meṣī(メーシー):eweとして知られている山ひつじの毛に小根は似ている
Miśā(ミシャー):黒っぽい色をしている
Mṛgabhaksā(ムルガバクシャー):動物に食べられる
Naladā(ナラダー):湿地を好む
Peśī(ペーシー):小根は繊維に似ている
Piśitā(ピシター):根は見た目繊維様である
Sulomaśā(スローマシャー):小根は赤茶色で見た目が良い
Tāmasī(ターマシー):小根は濃い茶色である
Tapasvinī(タパスヴィニー):小根は黙想家の髪のよう

【ガナ/クラ(古典における分類)】
ガナ)
チャラカ: Sanjñāsthāpana(意識回復作用)
ミシュラカ;sugandhāmalaka(十種芳香薬+アーマラキー)、Dr. Lad’s 24dravya

クラ)
Mamsīkula

【ラサ(味)】
苦渋甘

【グナ(性質)】
軽油鋭

【ヴィールヤ(効力)】
冷性

【ヴィパーカ(消化後味)】

【プラヴァーワ(特異作用)】
精神的問題の緩和(ブータグナBhūtaghna (=manasdoṣahara, ))

【ドーシャへの影響】
トリドーシャシャーマカ (Tridoṣaśāmaka、三つのドーシャを緩和する)

【スロトガーミトワ(経路・臓器・組織行性、親和性。特に作用する部位のこと)】
ドーシャ)トリドーシャ
ダートゥ)マッジャー、ラクタ
マラ)スウェダ
臓器)脳

【カルマ(作用)】
・意識回復作用(Sañjanāsthāpana)
・健脳作用(Medha)
・顔色を良くする(Varṇya)
・毛髪に良い(Keśya)
・育毛作用(keśavardhana)
・体力向上(Balya)
・鎮痛作用(Vedanāsthāpana)
・灼熱感を治す(Dāhapraśamana)
・ワーユとアグニを亢進(Uttejaka)
・消化力向上(Dīpana)
・毒素燃焼(Pācana)
・感気作用(Anulomana)
・肝臓賦活作用(Yakṛduttejaka)
・利胆作用(Pittasāraka)
・心保護・強心作用(Hṛdya)
・心拍出力増強作用(Hṛdyottejaka)
・昇圧作用(Raktavahinisamkocaka)
・止血作用(Raktastambhana)
・抗浮腫作用(Śothahara)
・過剰なカファを液体にして排出(Kaphanihsāraka)
・尿量増加作用(Mūtrajanana)
・強精作用(Vajīkaraṇa)
・通経作用(Ārtavajanana)

【適応(ローガグナタ)】
精神病(unmāda)
てんかん(Apasmāra)
ヒステリー(Apatantraka)
憑依障害(Būtābhiṣaṅga)
失神(Mūrchā)
記銘力低下(Smṛtihrāsa)
脳機能低下(Mastiṣkadourbalya)
衰弱(Daurbalya)
頭痛(Śiraḥśūla)
顔色の異常(varṇavikāra)
無気力(Hṛtśaithilya)
トリドーシャ性の発熱(Sannnipāta jwara)
浮腫(Śotha)
疝痛(Śūla)
灼熱感(Dāha)
消化力低下(Agnimāndya)
鼓腸(Anāha)
腹部疝痛(Udaraśula)
心臓病(Hrdvikāra)
頻脈(Hṛddrava)
血液疾患(Raktavikāra)
難治性皮膚病(Kuṣṭha)
皮膚病(Carmaroga)
丹毒(Visarpa)
咳嗽(Keśa)
月経困難症(Rajahkṛchra)
子宮内膜炎/子宮筋層炎(garbhāśayaśotha)

【薬用部位】
根茎

【用量・用法】
粉末: 2−3g
煎じ液: 粉末5−10gで作る

【含有化合物】
sesquiterpenes
coumarin
alkaloids
lignans
neolignanes
jatamansone
α-patcho-ulense
jatamansic acid
nardin
nardal
nardol
valerenal
angelicin
β-eudesmol
β-atchoulense
β-sitosterol
calarene
jatamansin
jatamansinol
valeranal
valeranone
nardostachnol
nordostachnol
actidine
propionate
cyclohexanol
ester
essential oil
resin
sugar

【使用例(āmayikaprayoga)】
・ トリドーシャ性発熱にジャタマーンシーを用いる
・丹毒と外傷にジャタマーンシーから作ったペーストを用いる
・多くの解毒薬にジャタマーンシーは原材料として含まれる
・ジャターマーンシーとブラーフミーは相補・相乗効果がある。
 注意力、知能、自信を改善するのに茶匙半分ずつのジャターマーンシーとブラーフミーを茶匙1杯の蜂蜜と混ぜて朝に飲む
・不安、神経質に対しジャターマーンシー、シャンカプシュピー、ターガラの等量混合物を茶匙半分から1杯、1日3回飲むと良い
・足や尿路、眼他の灼熱感に対し茶匙半分のジャターマーンシーをカップ1杯の牛乳と煮て食後に1日2回投与すると良い
・皮膚を美しく保つために茶匙半分のジャターマーンシーに茶匙1杯の蜂蜜を混ぜてそれを顔面に塗り、しばらくしてから取り除いて水洗いすると良い

【処方例・主な適応】
māṁsyādi kwatha・不眠、鬱、不安神経症
Sāraswata cūrna・眼病
Jatāmāṁsyārka・精神病、てんかん
Mahāpaiśācika ghṛta・精神病、てんかん
Prasham・不安神経症、不眠症

【注意・禁忌】
重度の不眠症。
多量に服用すると腹痛、嘔吐下痢を起こし得る

【1行まとめ】
悩みを消し頭を良くする優れもの

【臨床小話】
このジャターマーンシーから作られた薬用ごま油でのシローダーラーは本当に良く効きました。これがブータグナというプラヴァーワ、特異作用か。とびっくりしましたが、心を悩ます悩み事が、あたかも消しゴムで消し去ったかのようにそもそも脳内や心の中に存在しなくなるので心が何にも悩まされることなく安定し、あちこちに注意が逸れることもなくなり、結果としてとても集中力が増すのです。ある程度の濃度がないとダメなようですが。2008年当時のジャタマーンシーオイルでのシローダーラーと、今日の薄くされてしまったジャターマーンシーオイルでのシローダーラーは全然結果が違うので。というか2008年以降、大学でシローダーラーを受けてもこの素晴らしい効能は感じなくなってしまいました。ジャターマーンシーは絶滅危惧生薬なので、インド政府から濃度を薄くするよう指導が入ったそうなのですが、プラヴァーワが感じられない濃度じゃ使うだけ無意味というか無駄なんじゃないかとも思ったり。人工栽培の努力はしないんでしょうか、インドは。日本の寒い山間部ででも人工栽培できると精神科への福音になると思うのですが。なんたって普通の向精神薬と違って副作用ないですし、知能にも良いんですけどね。

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