37)ウシーラ(Uśīra)(ベチバー)(冷辛)

★ウシーラ全草

★ウシーラの葉のアップ

★ウシーラの乾燥根を束ねたもの

【学名】
Vetiveria zizanioides (Linn.) Nash

【同義語・異名】
アバヤー(Abhayā):ウシーラは多くの病気に有効である

アムルナーラ(Amṛṇāla):茎はカマラのそれに似ている

バフムーラ(Bahumūla):多くの根を持つ

ガンダーダダヤ(Gandhāḍhadaya):根は爽やかな香り

ハリプリヤ(Haripriya)

ジャラモーダ(Jalamoda):この植物は湿地に育つ

ジャラワーサー(Jalavāsā):この植物は湿地に育つ

ムルナーラム(Mṛṇālam):ウシーラの茎は蓮のそれに似ている

ナラダー(Naladā):心地よい芳香を与える

ラナプリヤー(Raṇapriyā):羊に好かれる

サマガンディカー(Samagandhikā):香料として価値の高い

セービャ(Sevya):ウシーラは発熱などの病気に対し非常に有用である

シシラー(Śiśirā):この植物は湿地に育つ

シティムーラカム(Śitimūlakam):根は冷性

スガンダムーラ(Sugandhamūla):根は爽やかな香り

スガンディカー(Sugandhikā):心地よい芳香を与える

ワーリタラー(Vāritarā):この植物は湿地に育つ

ベチバー(英名)

ヴィーラナムーラカー(Vīraṇamūlakā):ウシーラはヴィラーナという植物の根である

ヴィールナヤク(Vīrnayak)

ウサル

カスカスがヤ(和名)

【ガナ/クラ(古典における分類)】
ガナ)
チャラカ: stanyajanana(乳汁分泌促進薬), chardinigrahaṇa(止嘔薬), dāhapraśamana(灼熱感治療薬),tiktaskandha(苦味薬グループ)

スシュルタ)sārivādi, pittasaṁśamana

ミシュラカ:jīvana pancamūla(活気五根)


クラ)
kaṇṭakārikula


【ラサ(味)】
苦甘

【グナ(性質)】
粗軽

【ヴィールヤ(効力)】

冷性

【ヴィパーカ(消化後味)】



【ドーシャへの影響】
カファピッタシャーマカ


【スロトガーミトワ(経路・臓器・組織行性、親和性。特に作用する部位のこと)】
ドーシャ: カファピッタシャーマカ
体組織(ダートゥ):ラサ、ラクタ、メーダ

老廃物(マラ):汗、便



【カルマ(作用)】

・過剰なカファを液体にして排出する(kaphaniḥsāraka)

・体力向上(balya)

・顔色を良くする(varṇya)

・脳神経鎮静作用(mastiṣkanādiśāmaka)

・解熱作用(jvaraghna)

・消化力向上(dīpana)

・アーマ燃焼(pācana)

・止嘔作用(chardinigrahaṇa)

・収斂作用(stambhana)

・血液浄化作用(raktaprasādana)

・心機能抑制作用(hṛdayaśāmaka)

・止血作用(rakutarodhaka)

・皮膚の異常を治す(tvagdoṣahara)

・難治性皮膚病を治す(kuṣṭhaghna)

・辛味のように作用する(kaṭupouṣṭika)

・制汗作用(svedāpanayana)(←主作用)

・灼熱感を治すdāhapraśamana

・口渇を治す(tṛṣṇānigrahaṇa)

・発汗作用(svedajanana)(ピッタ性発熱などの特殊な状況のみ)

・臭汗症を治す(svedadaurgandhyahara)

・尿量増加作用(mūtrajanana)

・解毒作用(viṣaghna)

【適応(ローガグナタ)】

衰弱(Daurbalya)

脳疾患(Mastiṣkavikāra)

失神(Mūrccha)

酩酊状態(Mada)

発熱(Jvara)

灼熱感と口渇のひどい発熱(Dāhatṛṣṇādhikya jvara)

灼熱感(Dāha)

口渇(Tṛṣṇā)

消化力低下(Agnimāndya)

消化不良(Ajīrṇa)

嘔吐(Vamana)

下痢(Atisāra)

出血性疾患(Raktapitta)

ラクタ性疾患(Raktavikāra)

心不全(Hṛddaurbalya)

咳嗽(Kāsa)

吃逆(Hikkā)

呼吸困難(Śvāsa)

肺結核/ひどい衰弱(Śoṣa)

皮膚病(Carmavikāra)

ひどい悪臭(Atidaurgandhya)

発汗過多(Atisveda)

臭汗症(Svedadaurgandhya)

排尿困難(Mūtrakṛcchra)

中毒(Viṣa)

【薬用部位】


【用量・用法】
粉末:3−6g

温浸出液(ファーンタ):50−100ml

冷浸出液(ヒーマ):25−50ml

蒸留によって得られた水溶液(アルカ):25−50ml


【含有化合物】
benzoic acid

b-vetispirene

epizizianal

iso-khusimol

khositone

khusimol

khusimone

prezizaene

β-Humulene

Terpene-4-ol

Terpens

Tripene-4-ol

Vetivazulene

Vetivene

Vetivenyl vetivenate

Vetiver oils

Vetiverol

Vetivone

Zizaene

β-vetivone


【使用例(āmayikaprayoga)】
・発熱時にシャダンガパーニーヤの一味として飲用する

・嘔吐の患者にウシーラとバーラカを米のとぎ汁と共に飲ませるとすぐ治る

・嘔吐の患者にウシーラと蜂蜜を摂らせると嘔吐と口渇に良い

・出血性疾患口渇、灼熱感のある患者に対してウシーラ、カリヤカ、ロドラを混ぜてそれらと等量のサンダルウッドと砂糖を混ぜたものを米のとぎ汁で飲むと良い

・汗疹に対してウシーラを外用すると良い

・関節リウマチ、腰痛、捻挫などにウシーラを貼ると良い

【処方例・主な適応】

ウシーラーサワ(Usīrāsava):出血性疾患

シャダンガパーニーヤ(ṣaḍañga pānīya):発熱、口渇

ウシーラーディクワータ(usirādi kwātha):アーマ性下痢、食欲不振

ウシーラーディチュールナ(uśirādi cūrṇa):出血性疾患、灼熱感

ウシーラーディヤタイラ(uśīrādya taila):尿閉、尿路結石

【注意・禁忌】
特になし

【1行まとめ】

汗・発熱・嘔吐・口渇・灼熱感に良い解毒ハーブ


【臨床小話】

インドの夏は凄まじく暑いのでいくら水を飲んでも口渇が収まらないことがよくあります。インド中西部のマハーラーシュトラ州では植木鉢と似た色の丸い素焼きの壺(下の方に蛇口付き)が夏には売っていて、人々はこの丸い壺に水を蓄えます。素焼きなので、水がじわじわと染み込んでじわじわと蒸発していき、その気化熱によって中の水がほどよく冷えます。クーラーのない古代からの知恵ですね!

この丸い素焼きの壺に入れた水に、ウシーラの根の束を布で包んで漬け込みます。ウシーラの冷浸出液(ヒーマと言います)、というわけです。インド人はこのほどよく冷えたウシーラヒーマを飲んで渇きを癒し、汗を落ち着かせるのです。

薬局のおじさんは「1束で2週間持つ、2個買って1日おきに使って、使わない日は直射日光に当てて干せば薬効が回復するから一ヶ月保つよ。」とか言ってましたが、明らかにピタッ。と汗が止んで涼しくなる効能を持ったよく効くヒーマなのはせいぜい最初の3回くらいでした。味はちょっと粉っぽいというか、澱粉質な感じがシャタヴァリに似ています。ラサは「苦味甘味」ですが甘くも苦くもないです。粉っぽいだけで。

 このウシーラは根を編んで帽子にされたり、

簾に加工されたり、

★ドライブイン入口にあるウシーラすだれ

★簾のアップ

といった形でも(揮発性油が仕事するんでしょうか)クーラーが日本ほど普及していない、インドの酷暑を乗り切る手伝いをしています。日本人が麦茶を飲むノリですね。

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