61)ナーガバラー(Nāgabalā)(冷甘)

☆Grewia hirsute、花と葉

☆Sida veronicaefolia、花と葉

☆乾燥根

【学名】

Grewia hirsute / Sida veronicaefolia

【科】
シナノキ科(Tiliaceae) / アオイ科(Malvaceae)

【亜種】
K.C.Chunekar教授は以下の四種類をナーガバラーであるとしている。

1) Sida veronicaefolia Lam

2) Sida humilis Cav.

3) Sida spinosa Linn.

4) Grewia hirsute Vahl.

ちなみにルーカス本は1)

ゴグテ本は4)

パンディ本は4)

ヘッジ本は1)4)併記、

カラー本は4)がナーガバラーであるとしている(個人的には4)はアオイ科じゃないので葉や花の色形もかなり違うので、4)はバラーの仲間とはちょっと認め難いのですが)。一応多数決で1)4)併記としました。


【同義語・異名】

Ariṣṭa(アリシュタ)

Bhūmibalā(ブーミバラー):地上を這うもの

Catuhphala(チャトゥフファラ)

Devadanda(デーヴァダンダ)

Gangerukī(ガンゲルキー):成長するのに多くの水を必要とする

Gudaśarkarā(グダシャルカラー)

Heart leaf fan petals(英名)

Hṛsvagavedhukā(フルスワガヴェードゥカー):ゴードゥーマの小さい亜種に似ている

Jhaṣā(ジャシャー):その地域を覆い広がる匍匐植物

Kala(カラ)

Khandari(カンダリ)

Kharagandha(カラガンダ)

Mahapatra(マハパトラ)

Mahasamga(マハサンガ)

Mahoday(マホーダイ)

Shasha(シャシャ)

Sita balā(シタバラー)

Snake mallow(英名)

Vridhibala(ヴリディバラ)

Vrisharuha(ヴリシャルハ)

Viśvadevā(ヴィシュワデーヴァー):あまねく高く評価されている

Udanika(ウダニカ)

【ガナ/クラ(古典における分類)】
ガナ)

ミシュラカ:balātraya(バラー三種)


クラ)
Parusakakula / Kārpāsakula


【ラサ(味)】
甘渋

【グナ(性質)】
重油粘

【ヴィールヤ(効力)】

冷性

【ヴィパーカ(消化後味)】


【ドーシャへの影響】
ワータピッタシャーマカ

【スロトガーミトワ(経路・臓器・組織行性、親和性。特に作用する部位のこと)】
ドーシャ: ワータとピッタを緩和する
体組織(ダートゥ):全てのダートゥに強壮作用を持つ

老廃物(マラ):便、尿


【カルマ(作用)】

・過剰なカファを液体にして排出する(Kaphaniḥsāraka )

・若返り作用(Rasāyana)

・向知性作用(Medhya)

・向知性作用(Nāḍībalya)

・知覚回復作用(Vedanāsthāpana)

・油性化(Snehana)

・解熱作用(Jvaraghna)

・灼熱感を治す(Dāhapraśamana)

・制酸作用(Amlatānāśaka)

・緩下作用(Anulomana)

・心保護・強心作用(Hṛdya)

・出血性疾患を治す(Raktapittaśāmaka)

・止血作用(Raktastambhana)

・創傷治癒促進作用(Vraṇaropaṇa)

・利尿作用(Mūtrala)

・催淫作用(Vṛṣya)

・安胎作用(Garbhasthāpana)

【適応(ローガグナタ)】

神経衰弱(Nāḍīdaurbalya)

記名力低下(Smṛtidaurbalya)

ワータ性疾患(vātavyādhi)

発熱(Jvara)

(マラリアなどの)間欠熱(Viṣamajvara)
呑酸症(amlapitta)

消化器ワータ性疾患(Koṣṭhagatavāta)

便秘(Vibandha)

咳嗽(Kāsa)

呼吸困難(Śvāsa)

嗄声(Svarabheda)

肺結核/血胸(Uraḥkṣata)

肺結核(Rājayakṣmā)

肺結核/ひどい衰弱(Śoṣa)

外傷による衰弱(Kṣatakṣīṇa)

心臓病(Hṛdroga)

出血性疾患(Raktapitta)

排尿困難(Mūtrakṛcchra)

過多月経(Raktapradara)

早産(Garbhapāta)

淋病(Pūyameha)

不正性器出血(Raktasrāva)

精子減少症(Śukradaurbalya)

外傷(Vraṇa)

創傷(Kṣata)

【薬用部位】

根皮


【用量・用法】
煎じ液; 50-100ml

根皮の粉末:3-6g

【使用例(āmayikaprayoga)】
・ひどい衰弱(śoṣa)に対してナーガバラー5gの根皮粉末を牛乳と飲み、毎日徐々に増やして40gまで増やす。牛乳中心の食事にすると体力を増す。

・ナーガバラーの根とアルジュナの樹皮を牛乳と一緒に一ヶ月投与すると心臓病に良い

・ナーガバラーの粉末をギー、ハチミツと混ぜて摂ると胸部外傷に良い。これを朝に飲むと消耗疾患(kṣaya, śoṣa, kṣatakṣīṇa)に良い。

・外傷に根のペーストを塗ると創傷治癒を促進する

【処方例・主な適応】

バラーディヤタイラ(Balādya taila)・精神異常、てんかん

ナーガバラタイラ(Nāgabala taila)・痛風

バラーディヤグルタ(Balādya ghṛta)・出血性疾患

【注意・禁忌】
特になし

【1行まとめ】

向知性作用と消耗性疾患特化の渋味持ち止血能力ありバラー


【臨床小話】

ピンで使ったことはないです。バラー、アティバラーと違い渋味も持っているので止血作用、つまり血胸や喀血により対応しやすくなっています。頭が良くなるのは嬉しいですね。

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